友達が亡くなるまでの10カ月間 2

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次にAと会ったのは、それから4カ月ほど経ったころだった。

まさかとは思っていたが、Aの隣に女はいた。

これで最低でも半年以上、女はAのそばから離れていないことになる。

ここまでくると、確実に異常と言えた。

二人で居酒屋に入ると、俺はさりげなくAに尋ねてみた。

「お前の周りでさ。最近亡くなった女の子いない?付き合ってた彼女とか、仲の良かった女友達とかでさ。」

「亡くなった子?うーん、いないと思うよ。なんで?」

「いや、いないならいいんだ。」

会話をしながら俺は、横目で女を見た。

そのときもやはり、前と雰囲気が変わった気がした。

どこがどう変わったのかはわからないが、何か違う気がするのだ。

あえて言うなら、女は黒くて不気味なモヤのようなモノを纏ったように見えた。

女を見ると、内側からネガティブな感情が湧いてくるようだ。

その時の俺の気持ちを上手く言葉にはできないが、あえて言葉にするならば不安感に近いのかもしれない。

不安感・・・・?

いいや、「黒い不安感」とでも言えばイメージしやすいだろうか。

俺はその「黒い不安感」を、アルコールを胃に流し込むことでごまかすことにした。

女の存在が気になってしまい、Aとの会話の内容なんてどうでも良くなってしまっていた。

その日も数時間で解散し、帰宅した後で俺は一人考えた。

何か忠告した方が良かったのだろうか?

だが、なんて言えばいいのだ?

「お前、女の霊に憑りつかれてるから気を付けろ。」とでも言えばいいのだろうか。

そもそも何に気を付ければ良いのか、俺にはわからない。

俺は霊が視えるだけで、霊と会話もできないし、除霊もできない。

信用できる霊能力者とやらも知らないため、誰かを紹介することもできない。

そもそも人生の中で自分以外の「視える人」にお会いしたことがないのだ。

「視える」と自称する人には何度かお会いしたことがあるが、その人たちの話を聞く限り俺の視えているものと違うのだ。

そのため、いまいち信用できない。

もちろん、俺の視えているものが幻覚であって、他の人が視えているものこそ本物の幽霊なのかもしれない。

だが人間というのは、自分の見えているモノこそ信用してしまうものなのだ。

俺からすると、霊能力者なる人たちの大半がインチキに思えてしまう。

だから、仮に霊障に困っている人と出会ったとしても、「お祓い行けよ」とも言ってあげられない。

どこのお祓いが「本当のお祓い」になるのかもわからないのだ。

もっと言えば「成仏」なるものがどんなものなのかもよく分からない。

「成仏」が分からない以上、「お祓い」や「除霊」なるものが本当に存在するのかすら知らない。

俺は、オカルト関連について無知のだ。

力になってあげることができないのに、幽霊の存在を本人に知らせれば、無駄に怖がらせてしまうだろう。

グルグルと同じようなことばかり考えてしまい、頭痛がしてくる。

どうすることが正解なのか答えが出ぬまま、その日はアルコールの匂いのする睡魔に頭を殴られて気絶することにした。

そうでもしなければ、眠れそうになかった。

それからさらに4カ月経った頃、Aから「今週飲みに行かないか?」と連絡があった。

断る理由がない。

何より、俺はとても気になっていたのだ。

それでも、俺から連絡を取らなかったのは、あの女が怖かったからかもしれない。

友達のことは気になったものの、あの女には会いたくないというジレンマがあったのだ。

Aに誘われてから、すぐに予定を合わせ会うことになった。

そして、会ってみて驚いた。

もっと言えば、驚きと恐怖が入り混じったような気持ちに襲われた。

Aの顔は、急激にやつれていたのだ。

もともと健康的な肌色をしていたはずなのに死体用のメイクをしたように青白い肌になっており、頬はガイコツのように痩せこけ、目の周りが窪み眼球が飛び出しているように見えた。

その姿は生きてる人間には見えなかったが、そんなことを本人には言えなかった。

当然のように、隣には女がいた。

そして、女の顔は凄まじいことになっていた。

恐ろしい形相・・・

悪魔・・・・

今まで無数の幽霊らしきものを見てきたが、こんな顔をしている霊を見るのは初めてだ。

そのあまりのおぞましさに、俺は思わず言ってしまった。

「お前、何しでかしたんだよ!? その女・・・・」

言っている途中で後悔した。

でもあの瞬間は言わずにはいられなかった。

彼女は生前、よほどのことをされたに違いないと思ってしまったのだ。

Aはもともと異性にだらしない奴ではあったが、まさかここまでの怨みを買うようなことをしていたのだろうか。

俺の発言に対しAは食い気味に聞いてきた。

「その女ってなんだよ? お前、何かわかるのか?おいっ、答えてくれ。なあっ!」

Aの様子から察するに、思い当たる節があるようだ。

俺は言った。

「とりあえず、今日は居酒屋に行くのやめないか?コンビニで酒でも買って、どこか静かな場所で飲もう。話はそこで。」

Aは興奮気味の顔のまま黙ってうなずいた。

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