前回→友達との約束
俺がはっきり断ると、Aは寂しそうに言った。
「そうか。そうだよね。○(俺の名前)には○の世界があるんだよね。うん、分かった。突然、ゴメン。元気でね。」
「ああ、うん。本当ゴメンね。また連絡するからさ。じゃあね!」
そう言って電話を切った。
そのまま俺は、お楽しみ会の準備のために友達の家に出掛けた。
・・・そして、その日の夜のこと。
家の電話が鳴った。
その時間には、もうお母さんは帰ってきている。
電話に出たのはお母さんだ。
受話器を持ったお母さんの顔は一瞬で曇った。
そして、俺の顔を見た。
少しして電話を切ったお母さんは、暗い声でこう言った。
「あのさ、今日ね。Aくんが亡くなったんだって。」
え?
意味が分からなかった。
だって、Aとはさっき電話したばかりだし。
久しぶりに電話をもらったばかりだし。
俺は聞いた。
「亡くなったって、なんで?いつ?」
「今日の3時過ぎにね。学校の帰り道に、トラックに跳ねられたんだって。」
お母さんは涙声に変わったまま続けた。
「Aくんのお母さんが言うのよ。Aくんね、最近よく言ってたそうよ。【俺にとって一番の親友は○だ】って。それでね【将来一緒に会社作るんだ】って、言ってたそうよ。」
お母さんは、泣き出していた。
Aが事故にあった3時過ぎというと、ちょうど俺がAから電話もらったころだ。
あいつの言ってた「こっち来れない?」っていうのは、【あの世】って意味だったんだと気づく。
だからお金はかからないって言ってたのか。
俺はてっきり、電車賃はAが負担してくれるって意味だと思っていた。
それにAの奴。
まだ一緒に会社作る話を本気で考えていたのか。
四年のときに、二人で計画していたんだ。
将来は二人で会社を作って大儲けしようなって。
それで、儲けた金でゲームやろうなって。
あいつ。
馬鹿野郎だ。
俺にとっても一番の親友はお前だったよ、ちくしょう。
何、死んでんだよ、馬鹿!
これじゃ、会社作れねえだろが。
このとき、俺は不思議と怖くなかったんだ。
友達にこの話をすると、
「それってさ。Aって子に、あの世に連れて行かれそうになったってことだよね?超怖いじゃん!」
などと言われる。
でも、俺は少し解釈が違う。
Aは、純粋に俺と会社作る約束を守りたかっただけだったんだって。
だから、俺があの世に行けないと分かると、すんなり退いてくれた。
あいつは友達を道連れにするような奴じゃないって、俺が一番分かってるんだ。
・・・・・・今俺は、20歳になったぞ、A。
もうすぐ、約束通り起業する。
社名には、俺とお前のイニシャル入れるから。
で、稼いだ金で真っ先にゲーム買うぞ。