中学校のころ。
どうしても必要なプリントを、学校に忘れてきてしまった。
時刻は、19時。
放課後というよりも、夜と言った方がいい時間だった。
どうしよう。
一人で暗い学校に取りに行くのも怖い。
でも、プリントが手元にないのもマズイ。
恐怖心と戦いながらも、俺は学校に戻ることにした。
・・・学校に到着した。
夜の校舎は、なんとも不気味な雰囲気だ。
警備さんに一声かけてから、教室に向かった。
廊下も真っ暗で、照明は「非常口」の明かりのみ。
こんなこともあろうかと、懐中電灯を持ってきていた。
でもまさか、こんなに暗いとは思わなかった。
俺が持ってきた懐中電灯は、豆電球のオモチャのような物だった。
これでは、よけいに怖くなってしまう気がした。
ホラーな雰囲気が増幅してしまうのだ。
まあ、明かりがないよりはましだろう。
暗いと勝手が違うため、教室にたどり着くのに少し時間がかかった。
俺はオモチャみたいな懐中電灯を頼りに、机からプリントを取り出し、すぐにカバンにしまった。
そのとき・・・・
教室の窓側から人の気配を感じた。
懐中電灯で照らして見ると、窓際の1つの席に誰かがいるように見えた。
席に座っているのだろうか。
「誰?」
思わず、大きな声で尋ねる。
クラスメイトだと思ったのだ。
でも、よく考えてみるとクラスメイトなわけがない。
こんな時間に教室に残っているわけがない。
なにより、暗い教室に一人で座っている奴なんて、どう考えても普通じゃない気がする。
俺の問いかけにも、返事はない。
俺は怖さを紛らわすためだろうか、人影に近づいてしまった。
自分でもなぜ近づいたのか、分からない。
座っていたのは、小学生くらいの男の子だった。
なんで小学生がいるのだろうか。
ここは中学校だ。
話しかけていいのかどうか迷いながらも、声をかける。
「君、ここで何してるの?」
男の子は、俺の声に反応してこちらを向こうとした。
だが、男の子が首を動かしたとたん、その子の首が
ゴロン
と取れてしまった。
そのまま、教室の床を転がった・・・・・
「うわぁああぁぁああぁあっぁーーーー!!」
俺は悲鳴を上げながら、逃げ出した。
とにかく走った。
暗闇の廊下で何度も転んだが、痛くもなんともない。
とにかく、逃げないとやばい気がした。
とんでもないものを見てしまった。
気がつくと、校舎の外まで逃げ出していた。
そして、震えながら家に帰った。
最悪の日となってしまった。
あんな怖い思いをしたことは生まれて初めてだった・・・・・
あの少年は幽霊だったのだろうか。
今でも、あのゴロンっと転がった首が脳裏に焼きついてしまっている。