A子さんは、知り合いからアンティークの鏡をもらった。
おとぎ話の中に出てきそうな鏡で、A子さんは一目見て気に入ってしまった。
鏡は毎日使った。
化粧をするとき、メイクを落とすとき、お風呂上りのスキンケア。
だが、不思議なことがあった。
その鏡を使い出してからというもの、A子さんは日に日に元気がなくなっていったのだ。
友達からも心配された。
「A子、顔色悪いよ?大丈夫?」
このときはまだ、本人は気が付いていない。
自分は疲れてがたまっているのだと考えていた。
もらった鏡が、不調の原因などとは夢にも思わなかった。
あるとき、A子さんは夢を見た。
例のアンティークの鏡の前で、お化粧をしている夢だ。
でも、おかしいのだ。
鏡に映る自分の姿が、だんだんと知らない女性の姿に変わっていった。
初めて見る外国女性の姿だった。
その女性は、化粧中に突然苦しみだした。
女性の首を、男性の手が掴んでいた。
きっと、男性に後ろから首を絞められているのだ。
女性が首を絞められていると、なぜかA子さんも苦しくなった。
過去味わったことがないくらいの苦しみだ。
苦しみの後で、フワッと意識が遠くなりそうになる。
そのときは気持ち良さすら覚えた。
そして、そのまま記憶がなくなった。
気がついたときは、朝だった。
嫌な夢だった。
A子さんは、トイレに立つ。
そして、トイレの鏡を見て愕然とした。
顔色は悪く、目の下はクマができている、首筋には謎のアザまであるではないか。
首をこすっても、アザは消えなかった。
さっきのは夢ではなかったのだろうか。
その日を境に、A子さんは繰り返し同じ夢を見るようになった。
鏡の前で自分が化粧をしていると、いつの間にか知らない女性の姿に変わっていて、最後は知らない男に首を絞められて終わるのだ。
・・・・・・・あるとき、A子さんは霊感の強い女性と知り合った。
その霊感の強い女性に開口一番言われてしまった。
「あなた、なにを連れてるのっ?!今すぐ、何とかしないと、身体を乗っ取られるよっ!」
思い当たるところがあるA子さん。
その霊感の強い女性に、アンティークの鏡のことを詳しく話した。
このときには、鏡と自分の不調の関係を疑っていたのだ。
その女性は真剣な顔で言った。
「悪いことは言わないから、すぐにでもその鏡を手放しなさい。そうしないと大変なことになるから。」
次の日、アンティークの鏡をリサイクルショップで売却した。
すると、体調がみるみる良くなった。
例の夢も見なくなった。
不思議なことがあるのものだ。
昔から、物は人の念がこもるという。
古い物なら尚更だろう。
今頃、あの鏡をどこかで誰かが使っているのかもしれない。