新・都市伝説「アゴミ」

ある地域で、一時期都市伝説のように広まってしまった話。

タイトルに「都市伝説」とあるが、内容は怖い話である。

あるとき、水野さん(仮名)という男性と話す機会があった。

私(当ブログ管理人)が「実体験の怖い話ありませんか?」と尋ねると、水野さんはタバコをくゆらせながら表情を歪めた。

「ないことはないんですけどね。あまり言いたくないんですよ。」

そんな思わせぶりな言い方をされれば、こちらも気になってしまう。

是が非でも聞きたい。

水野さんは、あっさりと私の頼みに首を縦に振ってくれた。

言いたくないと言いつつ、実は話がしたいのかもしれない。

「これはね、Aという男が体験した話なんですがね。」

Aには幼馴染の女の子がいた。

家が近所で、幼いころからよく遊んだ仲なのだという。

女の子を仮にBとしよう。

Bはとても可愛い少女だった。

そのルックスの良さから、幼稚園や小学校ではアイドル的な人気を誇っていた。

だが、小学校高学年になり成長期になると、Bの可愛さはどんどん失われていった。

小さなころはとても可愛い顔立ちの少女だったのだが、成長とともにアゴが急速に成長していったのだ。

どんなに他のパーツが整っていても、アゴだけが異常に発達していると可愛く見えない。

今まで散々「かわいい、かわいい」とチヤホヤされていたBにとって、それはとてもショックなことだったのかもしれない。

高校生になったころには、誰もBのことを可愛いとは言わなくなっていた。

それどころか、陰では「アゴミ」なんていうあだ名をつけられてしまっていた。

あるときBは自分の陰口を聞いてしまった。

「アゴミ、アゴさえなければ可愛いのにねー。」

それがそうとうショックだったようだ。

幼馴染のAにその胸の内を打ち明けてきた。

「ねえ。私のアゴってさ、目立つかな?」

Aはまだ十代の男子。

女心なんて全く分からない。

本当なら、「全然目立たないよ。気にすんなよ。」などと言ってあげればよかったのかもしれない。

だが、Aはそうは答えられなかった。

彼女の悩みを笑いにしてしまったのだ。

「え?お前のアゴ?良いよ、そのアゴ。笑いとれるだろ?誰かにアゴを握られた時だけ、声変えろよ。アゴ握られたら、【ヤメロヨー】みたいな感じで、甲高い声を出すんだよ。で、アゴから手を離されたら、声を元に戻すんだ。そしたらさ、絶対大爆笑とれっから。」

Aとしてはこのアドバイスに悪気はなかった。

「見た目のことなんて誰でも1つや2つ悩みあるから。コンプレックスも笑いに変えるくらいにしちゃえよ」

そんな意味で言ったそうだ。

もちろん、言葉にしなければ伝わらない。

相手は思春期の女子だ。

ましてや、子供のころから「かわいい、かわいい」とチヤホヤされてきたBにとって、幼馴染からのその言葉は耐えられなかった。

次の日から、Bは学校に来なくなってしまった。

もちろん、学校の誰もBが学校に来ない理由を知らない。

Bは一か月以上学校に来なかった。

止せばいいのにBのクラスメイトの男子数名が、イタズラ電話をしたそうだ。

Bの家に電話をかけ、Bを受話器に出させた。

そしてこう言った。

「こちら、○○中学(AとBが通う中学校)の校長ですが。アゴミさんは、アゴの急速な成長により学校に来られないのでしょうか?今は大事な成長期ですものね。たくさんカルシウムを摂って立派なアゴを完成させて、早く学校に来られるといいですね。」

もちろん、本当に心配などしているはずもなく、笑い者にしたのだ。

Bはこのイタズラ電話で、心が壊れてしまったのかもしれない。

それからすぐに、Bは自らの命を絶った。

首を吊っているところを発見されたそうだ。

当然、クラスメイトたちはBの葬式にも出席する。

だが、その葬式の場でも何名かの男子たちは、ふざけていた。

「Bの首吊りなら、アゴが引っ掛かってさぞ首が吊りやすかったろうな。」なんて言って笑っていた。

葬儀の日からしばらくすると、おかしな噂が流れるようになった。

亡くなったBが学校からの帰り道で目撃されるというのだ。

複数の目撃者がいて、噂はどんどん広まった。

噂は都市伝説のようになっていった。

「Bの姿を見かけた」

「Bはこちらを睨みつけてきた」

「Bに追いかけられた」

「Bは物凄いスピードで四足で走り追いかけてくる」

「Bに追いつかれた者は死ぬ」

噂はどんどん大きくなっていった。

どこまでが本当で、どこからが嘘なのか、誰もわからない。

Bの目撃者の数が、どんどん増えていったことだけが事実だった。

続き→新・都市伝説「アゴミ」 2

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