これは、ミナコちゃん(仮名)が中学の修学旅行で体験した話。
修学旅行で京都に行ったミナコちゃん。
京都では、班行動で観光していた。
6人の班だ。
ところが途中、お土産を個人個人で買っていたところ、ミナコちゃんははぐれてしまった。
京都に土地勘はない。
1人は心細かった。
そんなとき、違うクラスの女子を発見した。
トモエちゃんという子だ。
クラスも違うし、ほとんど話したことがなかった。
でも、今は京都で迷子状態のミナコちゃんだ。
トモエちゃんを発見し、安心することができた。
「あー、トモエちゃーん。分かる?私ミナコ。」
嬉しくて声をかけると、トモエちゃんもそれに応えて嬉しそうに返事をしてくれた。
どうやら、トモエちゃんも班のメンバーとはぐれてしまったそうだ。
1人の迷子よりも、2人の迷子の方がずっと心強かった。
とりあえず、学年のみんなが集合する場所があるので、そこに2人で向かおうということになった。
ただ、集合時間までにまだかなりの時間があった。
空いている時間は、「二人で一緒に京都観光しちゃおう!」ということに決まった。
テンションも上がる。
トモエちゃんとは話したことがなかったけれど、話してみると楽しい子だった。
そして、なぜかトモエちゃんは京都の街に詳しく、いろいろと案内してもらえた。
2人ではしゃぎながら、お土産を選ぶのもとても楽しかった。
ミナコちゃんは、「ああ、迷子で心細かったけど、トモエちゃんに会えて本当によかった。いい友達もできたし。」と、喜んでいた。
そして、そろそろ集合時間だからと、学年のみんなが集まる場所に向かった。
・・・・・・・・・・班の子達と再会すると、心配してくれているようだった。
「もうー、ミナコどこ行ってたの?心配したんだよー!先生に、ミナコが迷子のこと言っちゃったから、先生たちにも無事を伝えなくちゃ。」
「心配させてごめんね。でも、私は一人じゃなかったんだよ」
そう言ってミナコちゃんは、隣にいるトモエちゃんを見た・・・・
トモエちゃんがいない。
どこかで、はぐれたのだろうか。
今さっきまで一緒にいたはずなのに。
同じ学校の生徒がたくさんいて、トモエちゃんの姿がなかなか見つけられない。
ミナコちゃんは、トモエちゃんのクラスの生徒を見つけて聞いてみた。
「ね、トモエちゃんどこ行ったか知らない?」
「え?ああ、トモエちゃん。熱が出たとかで、修学旅行に来ていないんだよ。お休み。」
「・・・・え?」
そんなはずはない。
だって、さっきまでずっと一緒にいたし、この集合場所にだってトモエちゃんが案内してくれたのだ。
彼女の担任の先生に確認してみても、やはりトモエちゃんは今日は来ていないということだった。
迷子のミナコちゃんと、一緒にいてくれたのはいったい誰だったのだろうか・・・・
修学旅行を楽しみにしていたという、トモエちゃんの生霊だったのであろうか。