出会い系サイトの吸血鬼

これは、もう何年か前に友達から聞いた怖い話。

その友達を仮にAとしておこう。

Aは、当時出会い系サイトにはまっていた。

出会い系で知り合った女と性行為をして、その後はトンズラするようなことばかりをしていたそうだ。(いわゆるやり逃げだ)

ある日のこと。

出会い系の掲示板で、とんでもなくかわいい子の写真を発見した。

でも、騙されてはいけない。

こういう写真は、だいたいが釣り。

業者(サクラ)なのだ。

だが、その写真があまりに可愛かったため、Aは騙されているとは思いながらも1度だけメールを送ってみた。

すると、彼女からはすぐに返信があった。

少しやり取りをして感じたのだが、どうにも会話が業者のサクラっぽくない。

この子は、本当に存在する子なのかもしれない。

だとしたら、こんな当たり二度とない。

Aは興奮した。

いつの間にか、その子に夢中になっていた。

援助交際希望でもなければ、業者のサクラでもない。

純粋に出会いを求めているのだろうか。

はたして、こんなかわいい子が、出会いを求めるのだろうか。

リアル社会でいくらでもモテるだろうに。

Aは、何度もメールをやり取りするうちに、彼女に対して恋心のようなものを持ってしまっていた。

そして、二人は直接会うことになる。

待ち合わせ場所に着いたが、彼女の姿はない。

約束の時間5分前だった。

まだ、来てなくても変じゃない・・・

だけれど、彼女は5分過ぎても10分過ぎても来ない。

今まで、からかわれていたのだろうか。

そう思ったそのとき、何の前触れもなく突然目の前に、超がつくほどの美女が現れた。

「お待たせして、すみません。」

彼女だった。

いつの間に現れたのだろうか。

会ってみて改めて思った。

なんで、こんな美女が出会い系をやっているのだろうか。

その美しさは、画像を超えていた。

大人しくて控えめな雰囲気。

肌の色は透き通るように白く、大きな瞳は澄んでいた。

ピンク色の唇はとても妖艶な雰囲気だ。

Aは、会ったその日に彼女に堕ちていった。

そして、どういう話の流れからなのか、二人はホテルに足を運んだ。

出会ったその日にホテルに行ったのだ。

Aはその辺りのことを濁して言うのだが、「彼女が誘ったと思う」と歯切れの悪いことを言っていた。

そして、こうも続けていた。

「なんで、ホテルに行ったのか、実はあまり覚えていないんだ・・・」

ホテルに入ると、ベッドに横になる彼女。

Aはすぐ隣に腰掛けた。

すると、彼女の方からAに抱きついてきた。

抱きついてきた・・・・?

違う。

抱きつくなんてものじゃない、羽交い絞めに近かった。

Aは、とんでもない力で抑えつけられた。

身動きがまったく取れなかった。

女の力ではない・・・いいや、これはもはや人間の力じゃないと感じた。

骨がミシミシと軋むほどの力で抑えつけられると、彼女は次にAの首筋に歯を立てた。

ガブリ。

すさまじい痛みだった。

意識を失いかけるほどの痛みがどれくらい続いただろう。

めまいがしてきた。

立ちくらみのような感覚が、寝転んだ姿勢のまま起きていた。

そのまま、Aは意識を失ってしまった。

・・・・・・・・プルルルルーーー

電話が鳴っている。

ここはどこだ。

寝ぼけ眼で、目の前の電話に出てみた。

「・・・・・はい?」

「お時間10分前です。」

受話器からは、中年のおばちゃんの声がした。

そのときにすべてを思い出した。

ああ、俺は出会い系で知り合った超絶美人の女と、ラブホテルに来たのだった。

確か休憩3時間で入ったのだから、3時間も一人で眠っていたということになる。

部屋に、彼女の姿はなかった。

Aは、あわてて自分の貴重品を確認した。

泥棒ではないかと考えたのだ。

でも、何も盗られている物はなさそうだった。

彼女は何者だったのだろうか。

Aは、ホテルを出る前に洗面台の鏡で彼女に噛まれた跡を確認した。

首筋には、4本の牙で噛まれたかのような傷跡が残っていた。

そして、自分の顔色があまりに悪いことも気になった。

青白いのだ。

ホラー映画の中の吸血鬼じゃあるまいし、なんなんだ。

ホテルを出たAは自分の失敗談を友達に聞かせようと思ったのか、それとも怖くて誰かの声が聞きたくなったのか、俺に電話をしてきた。

そして、俺たちは少し会うことになる。

そのときに、この一連の話を聞かされた。

この吸血鬼話を、俺はまったく信じられなかった。

確かに、Aの顔色は今にも死にそうなくらい青白かった。

首筋にも痛々しい傷跡がはっきりと残っていた。

でも、吸血鬼はさすがに信じられない。

だが、その後、俺はこの話を信じるようになる。

実は、この話を聞かせてくれたAが、消息不明になってしまったのだ。

携帯もつながらないし、連絡も取れない。

ご両親は、警察に捜索願を届けたが見つからないのだという。

そして、少し怖いのだが、最後に会ったときにAが言っていた言葉が気になる。

「今日はなんだかのどが渇く・・・水を飲んでもまったく潤わない・・・・」

呟くように言っていた。

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