不思議な記憶・初恋のミステリー

僕には、不思議な記憶がある。

ミステリーのような話だ。

それは、幼稚園の頃のこと。

ボクには、好きな女の子がいた。

同じ組で、髪の毛が長くて女の子らしい子。

かわいい子だった。

初恋と呼べるようなものではないのかもしれない。

なにせ、ボクは幼稚園児。

恋なんてたいそうなものではなく、ただただ「気になる女の子」だったのかもしれない。

その子の名前は、カオリちゃん。

カオリちゃんと二人で会話したこと、幼稚園の遠足で手を繋いだこと、思い出は山のようにある。

でも、彼女とのことで不思議なことを発見してしまうことになる。

大人になった僕は、ある日突然、カオリちゃんのことを思い出した。

懐かしい記憶が蘇ってきたのだ。

あの頃の写真が見たいな、と思った。

そして、幼稚園の卒園アルバムを押入れから引っ張り出してきた。

もう、かなり色あせた写真ばかりだ。

でも、ページをめくるたびにかすかな記憶が蘇ってくる。

幼い記憶でも、意外と覚えているものだ。

ああ、この遠足だ。

カオリちゃんと手を繋いだのは。

確か、動物園に行った遠足だった。

卒園アルバムをめくるたびに懐かしさが蘇ってくるのだが、ページが進むにつれて違和感を覚えた。

おかしいのだ。

カオリちゃんが1枚も写っていない。

ついに、最後のページまで来てしまった。

そこには、やはりカオリちゃんの写真がなかった。

見落としたのだろうか。

今度は、さっきよりも念入りに写真を確認した。

でも、やはり写っていない。

カオリちゃんは、みんなとは違う小学校に行ってしまい、それっきり会うことはなかった。

小学校が違うことを、当時のボクは酷くがっかりしたのを覚えている。

その記憶があるということは、途中で引っ越したということはなさそうだ。

僕は調べてみることにした。

まずは、幼稚園が一緒で、未だに連絡が取れる友達に電話してみることにした。

確か、この友達も同じ組だったはずだ。

僕がその友達に電話して、幼稚園のことを話すと、彼も懐かしがっているようだった。

でも、彼はカオリちゃんのことを覚えていないという。

まあ、幼稚園の頃の記憶だ。

覚えていなくて当然かもしれない。

初恋の人探しと言うわけではないが、僕はその後も幼稚園が同じだった友人知人に連絡を取った。

そして、カオリちゃんのことをそれとなく聞いてみた。

でも、誰も覚えていないのだ。

1人も覚えていないなんて、そんなことあるのだろうか。

カオリちゃんは、とてもかわいい女の子だ。

決して、陰が薄いような子ではない。

さすがに、不思議に思った僕は、当時担任の先生をしてくれていた方にも連絡を取ってみた。

こんなことで失礼かとは思ったが、気になって仕方なかったのだ。

そして分かったことは。

先生すらも、カオリちゃんという園児はいなかったと言っているのだ。

僕が、カオリちゃんの名前を間違えて記憶してしまったのかもしれない、と思った。

だから、彼女の見た目の特徴や性格について説明してみた。

だが、そんな子は知らないと言われてしまった。

僕の中のこの記憶はすべて、自分自身の捏造なのだろうか・・・

そう思うしかなかった。

だが・・・・

それからしばらく経ったある日のこと。

部屋の荷物を整理していたときに、1枚の古びた紙切れを発見した。

紙切れをよく見ると、それは手紙だった。

折り紙の裏に書かれた子供の手紙だ。

その手紙には、子供の文字でこう書かれていたのだ。

「おとなになった○○くん(僕の名前)へ   もしも おとなになった○○くんが わたしのことをさがしてくれていても きっとみつけられないとおもうな でもわたしは○○くんのなかにいきてるから    かおりより」

漢字もなければ句読点もないその手紙。

きっと少女が書いたであろうその文字。

この手紙にはどういう意味があるのだろうか。

こんな手紙をもらった覚えはない。

文章の中身だけ見ると、園児が書いたにしては大人びている気がする。

でも、古びたその折り紙の手紙は、確かに僕の昔の荷物の中にあったのだ。

そして、「かおり」という名前が書かれているのだ。

「みつけられない」ってどういうことだろうか。

「○○くんのなかにいきている」っていったいどういうことだとうか。

今でもこのことは、僕の中でもミステリーだ。

カオリちゃんは、いったいどこに行ってしまったのだろうか。

もしかすると、あの子は最初から生きていない人だったのかな、などと考えてしまうこともある。

でも、それならそれでいいのだ。

だって、僕は彼女にたくさん素敵な思い出をもらったのだから。

この記憶は、永遠の宝物にさせてもらおうと思っている。

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