これは、今から6年前の話です。
当時、僕は独身で実家暮らしでした。
実家というのは、マンションの17階で、一人部屋をもらっていました。
ある夜のこと。
自室のベッドで眠っていると、突然謎の金縛りに襲われました。
身体が、動かないのです。
金縛り特有の目だけが動く状態です。
目を開け、ふと目線を横にずらすと、ベランダにつながる部屋のガラス戸が見えました。
カーテンは閉めていたはずなのに、なぜか開いています。
そして、ガラス戸の向こう側、つまりベランダに誰かがいるようでした。
よく見ると、小学生くらいの女の子です。
小学生くらいの女の子がこちらを見ているのです。
そこは、17階です。
ベランダに小学生の少女がいるなんてあり得ないことです。
しかも、こんな深夜に。
ご近所さんに、確か小学生くらいの女の子はいなかったはずです。
つまり、ベランダ伝いに渡ってくることも不可能なはずです。
幽霊でしょうか・・・・
怖くなった僕は、目をぎゅっと強く閉じて、わけのわからない念仏を唱えました。
それしかできることはなかったのだと思います。
・・・・・・・・・気がつくと朝でした。
あれは、夢だったのでしょうか。
おそらく夢だったのでしょう。
怖かったため、夢だと思うことにして、気にしないようにしていたのです。
その日の夜。
僕が眠っていると、またもや金縛りに襲われました。
恐怖心から、今日は目を開けるのはやめることにしました。
また、ベランダにあの少女がいたら嫌ですから。
そのとき、お腹の辺りに違和感を感じました。
なんだか、嫌な予感がします。
恐る恐る目を開けてみると、僕のお腹の真横に昨日見た少女が、座っていたのです・・・・
うわーーーー、と声を出そうとしましたが、金縛りで叫ぶことができません。
少女は、僕のTシャツを捲し上げて、お腹を観察しているようでした。
女の子の手には、明かりのようなものを持っています。
よく見ると、それは僕の携帯電話です。
携帯の液晶のボゥーっとした明かりを頼りに、僕のお腹をずっと観察しているのです・・・・
もう、あまりの恐怖に吐き気すら覚えました。
どうしていいかわからずに、昨日と同じように目を閉じて心の中で念仏を唱えます。
「ナムアミダブツ・・・・・僕はあなたに、何もしていません。許してください、許してください・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・どれくらい経ったでしょうか。
そっと、目を開けてみると、少女は僕の顔を覗き込んでいました・・・・
もう、失神寸前です・・・・
そして、女の子は僕の顔を覗きながら、ぼそっと一言つぶやいたんです。
「この人じゃなさそうね・・・・」
そして、少女はふっと消えてしまいました。
その瞬間、僕の金縛りは解けて、動けるようになりました。
動けた瞬間思ったことは、またもやすべては夢だったような気がしてきました。
でも、1秒後にこれが夢ではなかったことを知りました。
携帯が液晶の明かりがついていたのです。
そして、僕の顔の横、つまりベッドに落ちていました。
携帯は寝るときはいつも、デスクの上において眠っています。
デスクに置いていたはずの携帯が、ベッドの上に落ちていることは後にも先にもこのときだけでした。
深夜に2日連続で現れたあの少女はいったいなんだったのでしょうか・・・・