あるところに、少しだけ霊感のある高校生の少女がいた。
その少女に、幽霊を視ることはできなかった。
だが、「感じること」はあった。
「あ、今この部屋にいる!」
そう感じるときに、幽霊がいると思った方向を見ると、その空間がドンヨリ暗くなっていることがある。
ときには「パキッ、パキッ」というラップ音のようなものが聞こえることもあった。
少女は、自分に霊感があることを自覚していた。
「そうだ。私は将来、霊能力者になろう。そして、心霊体験で困っている人を助けてあげよう。」
そんな風に思ったのだった。
でも、現状の霊能力では到底霊能力者とは呼べそうにない。
少女はその日から、我流で「霊感を高める方法」を模索するようになった。
いろいろな方法を試した。
一番自分が霊を感じることをやり続ければ、きっと私の霊能力は高まるはずだ。
そう信じて、少女は来る日も来る日も頑張って努力した。
そして、ついに禁断の霊感を高める方法を発見したのであった。
その方法とは、深夜、部屋の電気を真っ暗にして霊に語りかけるこというものであった。
少女がその方法を試してみると、いつも以上に異界をそばに感じることができたのだ。
将来のために、これを毎日のように続けた。
1ヶ月ほど経ったであろうか。
その日も少女は、深夜に一人で霊に話しかけていた。
「そこにいますよね。感じます。私の言うことに答えてくれますか?」
そう聞くと、初めて霊からコンタクトがあったのだ。
「・・・・・・うん・・・・・・・・」
小さな声だが、返事があった。
嬉しくなった少女は、さらに聞いた。
「あなたは幽霊ですよね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
返事がない。
「え?あなたは幽霊じゃないのですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
返事がない。
さっきの「うん」は空耳だったのだろうか。
よし、今度は別の質問だ。
「あのよろしければ、お姿を見せていただけませんか?」
「・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・」
やった。
姿を見せてもらえる。
霊を感じることはあっても、姿を見たことがない少女は喜んだ。
これで、未来の霊能力者に近づけた気がした。
少女は、部屋の電気をつけようとしてみたが、いきなり明るくするのも良くないように思えた。
そこで、ベッドについている小さな照明を点けてみた。
小さな明かりが、部屋の中を照らす。
あれ・・・
霊なんて見えない。
どういうことなのだろうか。
霊は、どこにいるのだろうか。
もしかして、まだこの程度の霊感では視ることができないのだろうか・・・・
そう思ったときだった。
少女は急激に意識が遠のくほどの苦しみを感じた。
喉が張り付いてしまうような苦しさだった。
誰かに後ろから首を絞められているんだ、と気が付く。
必死に、それを振りほどこうと後ろを振り向いた。
すると、そこには無表情の中年の男がいて、少女の首を無表情のまま絞めていた。
このままでは、自分の命が危ない。
少女は、とにかく抵抗した。
心の中で「助け」を求めた。
と同時に、「謝罪の言葉」を連呼した。
・・・・・・・・ああ、もうだめだ・・・・
そう思ったときに、ふと呼吸ができるようになった。
・・・助かったのだろうか。
よく分からない。
少女は、咳き込み続けた。
落ち着くと、すぐに電気をつけ部屋を出た。
その部屋にはいたくなかったのだ。
洗面所で鏡を見ると、首には赤黒いアザが残っていた。
そんな経験をしてから、少女はもう2度と霊能力者になりたいとは思わなかった。
それ以降、オカルト的な体験をすることもなくなったのだとか。