飛び降りる人影

女性の体験談です。


当時、私は4歳で保育園に通っていました。自宅の隣には大叔母が住んでおり、保育園をズル休みした日は、必ず大叔母の家に遊びに行っていました。その日もいつものように遊びに行き、台所でお昼ご飯の手伝いをしていた時でした。

外を見ていた大叔母が「危ない!○○ちゃん(私の名前)!おんぶしたるから、一緒においで!」と私に叫んだのでした。訳も分からず言う通りにすると、靴も履かずに外に飛び出してしまいました。

そして大叔母は私を負ぶったまま、道路を挟んで向かい側にある6階建てのマンションに向かいました。エレベーターも使わずに最上階まで階段を駆け上がると、そこには思いつめた表情で下を見つめる年配の女性がいました。大叔母が諭すように話しかけると、彼女は泣き崩れていました。当時の私は、その状況が何を意味しているのかわかりませんでした。

その数日後、“マンションの住人の女性が、6階の階段から飛び降り自殺をした”との噂が近所に広まりました。母親は「この前なんで、オバちゃんがアンタを連れてマンション行ったかわかる?自殺した人、ここ最近何回も飛び降り自殺をしようとしとって、その度にオバちゃんが止めに行っとったんやで。でも、今回はあかんかったみたいやな。かわいそうに。」と私に言いました。

そこで初めて、先日の出来事が何を意味していたのかを理解しました。もしあの時、少しでも自殺を止めに入る時間が遅かったら、私たちの目の前で彼女が飛び降り自殺をしていたかもしれない、と思うと、とても恐ろしくなりました。

それから12年の時が経ち、私は高校生2年生になっていました。お風呂でのぼせた体を涼ませようと家の前に出た時でした。

あのマンションの屋上から、人が飛び降りる瞬間を見てしまったのです。身を乗り上げる人影を見た時に、忘れかけていたあの時の記憶が蘇りました。あっと思った瞬間、人影は真っ逆さまに落下しました。

ところがおかしなことに、その人影は地面に到達する直前にパッと消えてしまったのです。恐ろしさよりも、消えてしまった事に驚いてしまい、落下地点を良く見てみましたが、人影らしきものはなく、落下音も聞こえませんでした。

ただの見間違えだと自分に言い聞かせ、その日は眠りにつきました。もし、本当に人が飛び降りたのであれば、誰かが見つけて明日には大騒ぎになっているだろう、と無責任な事まで考えていました。

翌日になり、結局マンションで事件が起こった事実など無く、やはり私の見間違えだった事が判明しました。母親にその話をすると「気味悪い話せんといてさ。まあ、見間違いやと思うけど、ちょうどこれくらいの時期やったよ。マンションの人が自殺したのも」という母の言葉を聞いてゾッとしました。

何度も自殺を止められた彼女は、死にきれずに飛び降り行為を繰り返しているとでもいうのでしょうか?23歳になった今でも、あれは単なる私の見間違いであったのだ、と自分に言い聞かせています。

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