達也くんは、小学六年生だった。
ある夏の暑い日のこと。
夏休みだった。
午後のうだるような暑さの中、やることもなく家でテレビゲームをしていた。
すると、家のインターホンが鳴る。
出てみると、クラスメイトの篠塚くんだった。
篠塚くんは近所に住んでいる学校の友達で、なにかと二人で遊ぶことが多い。
「ねえ、川原で遊ぼう。」
やることもなかった達也くんは、篠塚くんの提案に二つ返事でOKした。
家の近所に流れている川まで、徒歩で10分ほど。
自転車なら5分かからない。
二人は転車で川まで行くと、川原でキャッチボールをして遊んでいた。
だが、真夏の暑さだ。
すぐにバテてしまった。
「あちいーー。やっぱ、体動かす系はきついね。釣竿でも持ってきてれば、魚釣りでも良かったんだけどなー。」
篠塚くんは、釣りが好きなのだ。
釣竿こそないものの、二人はなんとなく川の近くまで行ってみた。
川岸まで来ると、川沿いを歩いた。
歩いてみると、川風が涼しくて気持ち良い。
また、ここまで来ると人気もほとんどなく、自分たちだけの世界のようで面白い。
いつの間にか1キロくらいは歩いたかもしれない。
ふと見ると、川の中に何かが浮いていた。
とても大きなものだ。
良く分からない物体だけど、あまり見かけないようなものだから、二人は興味がわいた。
そばにあった大きめの棒切れを拾うと、二人で川に浮かぶ大きな謎の物体をつついて遊んだ。
藻みたいなものがたくさん絡まっている。
その物体がなんなのかさっぱり分からなかったけれど、棒でつついた感触はブヨブヨしていて面白かった。
その後、謎の物体で遊ぶことにも飽きた二人は、達也くんの家に戻りゲームを楽しんだ。
次の日。
その川で、水死体が打ち上げられた。
水死体が発見された場所は、ちょうど達也くんと篠塚くんが遊んでいた付近だ。
遺体には、たくさんの藻がからまり一見すると遺体のようには見えなかったのだとか・・・・
それを知った達也くんは、心底ゾッとした。
大人になった今。
「あのときは、死体だと分からずに、棒でつついちゃいました。今考えると、死体の第一発見者は俺と、篠塚ですよ。」
苦笑いで答えていたが、当時はまったく笑えない出来事だったという。