死体愛好家の職業

ある女性の体験談。


昔、数か月だけヘルス嬢をしていたことがあります。

私が働いていた風俗店は、東京の某所にあり、規模もそれなりだったので毎日のように大勢のお客さんが来店していました。

ヘルスというのはソープよりも安価で、キャバクラよりも満足感を得られる(抜ける)というのもあり、本当に色んな性癖の男性がやって来ます。

当時の私はS気質の女王様プレイを売りにしていましたので、「踏んでほしい」「罵ってほしい」「赤ちゃんプレイをさせてほしい」という非常にマニアックなお客さんばかりが常連になっていました。

これだけでも変わっているのですが、短い私のヘルス嬢生活の中で、一番不気味で怖いと思った人がいます。

そのお客さん(ここではAさんとしましょう)は、年齢は30代で色白でスラリと背が高く、いつもおしゃれなワイシャツと靴を身に着けていました。物腰も柔らかく、多趣味でどんな話題でも面白く広げられる、笑顔が爽やかな好青年です。

紳士的でおしゃれな若者が、なんでこんなヘルスなんかに?女には困らなそうなのに…と思いました。

ですが、Aさんが初めて入った日に「絶対に守ってほしい条件」というものを提示されました。

・しゃべらない

・喘ぎ声を出さない

・自分の力で体を動かさない

・なるべく瞬きをしない。もしくはずっと目を瞑っている

・大きく息をしない

嬢に対して色々と注文をつけるお客さんは少なくありませんが、どれも今まで提示されたことのない条件ばかりでした。

特に「瞬きをしない」「大きく息をしない」というのは無理があります。

また、「声を出さない」「喘ぎ声を出さない」というのも、ヘルス嬢にとっては難しい注文です。

身も蓋も無い言い方ですが、風俗嬢はお客さんの愛撫に対して、感じているフリをするのも仕事の一つです。全然気持ち良くなくても色っぽい演技をする必要があります。

Aさんはそれを理解した上で、「何もしなくていいから。とにかくダラっとしててくれればいい」と言います。

ちょっと変だな、と思いながらも承諾し、彼の言うとおりにプレイをこなしました。

Aさんは私の常連になってくれて、最低でも月2回は来てくれる太客になりました。それにつれて、私への要求がエスカレートしていきます。

「寒いと思うけど、水を浴びて体温を下げて欲しい」

「舞台用のファンデーションを持って来たから、肌の色を変えて欲しい」

「白い浴衣を持って来たから、これに着替えて」

「顔にはつけないから、ボディペイントをしていいかな?」

このようなAさんの要求に応えていて、私は気付きました。

Aさんは、死体愛好者なのかもしれない…と。

とくにAさんは、青白い肌に打撲痕のある体を好みました。(すべてボディペイントで作り上げたものです)

「もしかしたら、いつか本当に死体にされてしまうかもしれない」

かなり飛躍した考え方に思えますが、密室でそういう性癖を持つ人と二人きり…という状況に置かれると、そのような方向に考えが行ってしまいがちになります。

それ以来、私は別の仕事を始めた時期でもあったため、ヘルスへの出勤が減り、Aさんと会うことが少なくなりました。

ですが、店を辞める日にAさんが私を指名して来ました。

「最後だから、僕が一番好きなこれを着て欲しい」とAさんが持って来たのは、病院なんかで患者が着るような青い服でした。私はそれを着て、ビクビクしながら要求通りにプレイをこなしました。

Aさんは、「今までどうもありがとう。君と会えないのは寂しい。もし良かったら、いつでも連絡して」と名刺を渡してきました。

その名刺はAさんが仕事で使うものらしく、本名と勤務先、電話番号などが記載してありました。

この時私は、Aさんの職業を始めて知りました。

Aさんは救命医だったのです。

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