山で会った女の子

女性からお聞きした話です。


祖父が子供の頃、今から70年以上昔の話です。

当時の日本は太平洋戦争真っただ中でしたので、都会はいつ空襲で焼かれてしまうか分からないという理由で、東北の親戚の家に預けられました。

戦争が激しくなり、生活に必要な日用品や日々の食料までもが配給制になった頃。都会では配給でもらう食料だけでは、お腹がいっぱいにならないと言われていましたが、逆に田舎の方が野菜や米が豊富にあり、育ち盛りの祖父は田舎暮らしをそれなりに満足に過ごしていたようです。

それでも、やはり村にはほとんど男の人の姿はなく、老人や女性、子供ばかりでした。

友達も出来て村の生活にも慣れて来た頃、学校の友達と村はずれの小山を探検しに行きました。その山は大きくはないのですが、いつも薄暗く鬱蒼とした不気味な山で、村の大人たちもなぜかあまり入らない山でした。

「他の山には山菜採りに行くのに、ここには来ない。きっと山菜やきのこがたくさんあるはずだ」

悪ガキたちは意気揚々と山へと入っていきましたが、ろくに人の入らない山ですので道らしい道も無く、途端にバラバラになってしまいました。

祖父の話だと、夏の終わり頃だったようですが、山に入った瞬間すぅ…っと空気が冷たくなり、得体の知れない不気味さを感じたと言います。

これは不味いぞ、と怖くなり来た道を戻ろうとすると、祖父と同い年くらいの女の子が歩いてきました。丈の短い古着の着物をきた子で、学校では見た事のない子でした。

「山に入って行くのが見えたから追いかけて来た。山で遊んでいると大人に怒られるから、早く出た方が良いよ」

女の子は祖父にそう教えて、山の入り口まで案内をしてくれました。女の子は入口まで祖父を送ると、そのままどこかへ行ってしまいました。ほどなくして、友達もみんな戻って来たので無事に帰ることができました。

帰り道で友達に女の子のことを聞いてみましたが、みんな「そんな子は知らない」と首をかしげていました。

その後、祖父は例の小山の近くで度々女の子と会うことがありました。約束をしたわけでも、探していたわけでもないのに、向こうの方から祖父を見つけては話しかけてきたのだといいます。

いつも同じ古い着物を着ており、祖父のおしゃべりや遊びに付き合ってくれました。お互い自分の身の上は語りませんでしたが、いつの間にか仲良くなっていました。

どんどん仲良くなるにつれて、女の子は祖父によくこう言っていました。

「私と遊んでること、村の人には内緒にしてね」

なんで?と聞きたいのは山々でしたが、何か人には言えない事情があるのだろうと思い、村人には彼女と仲良くしていることは言わずにいました。

やがて日本は終戦を迎え、戦地に行っていた祖父の父(私の曽祖父)が帰って来たこともあり、祖父は村を離れ都会に戻ってきました。

大人になって結婚しても、親戚や友人に会いに村に行く事はありましたが、その女の子には二度と会う事はありませんでした。

しかし、大人になってからある村の人に思い出話として女の子と遊んでいたことを話したら、その人は顔を青くして女の子の特徴を聞いてきました。

小山で出会った、古い丈の短い着物を着ていた……祖父は聞かれるままに答えると、その人はこう言いました。

「その子、俺のばあさんも遊んだことあるって言ってた」

後に祖父が調べたところによると、祖父が友達と面白半分に入った小山は、かつて口減らしのために子供を捨てていた山だったそうです。祖父の子供の頃には当然そんな風習はありませんでしたので、もっともっと昔の話ですが……。

そして祖父以外にも数名、様々な時代で同じ女の子と遊んだことがあると言っている人がいました。あの女の子が何者なのか、あまり深入りしたくないなと祖父は言っていました。

私が祖父からこの話を聞いたのは、今から数年前です。つい最近になって思い出したので、母に話してみたら……

「私、子供の頃にその子と遊んだ」

もしかしたら、私も記憶に無いだけで遊んだことがあるのかもしれません。

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