合宿中の不可解な傷跡

夏のこと。

ある資格を取るために、俺は夏合宿に参加していた。

山のそばで田舎町だった。

ここなら邪念が入ることなく、勉強に集中できそうな環境であった。

合宿期間は2週間。

1日、2日と順調に勉強が進み、3日目のことだった。

俺が朝目覚めると、腕に見たこともない傷がついていた。

カッターナイフで切ったかのような傷だ。

左腕の内側に横に一本ツーっと。

まるで、自殺未遂したかのような傷跡で気味が悪い。

俺は「寝ている間に何かで切ったのかな?」くらいに考えて、それほど気にしていなかった。

だが、おかしなことは続いた。

4日目の朝。

起きてみると、またもや左腕に鋭利なもので切ったような傷がついていたのだ。

昨日が横一文字に切られていて、今日は縦に一本の傷。

漢字の「十」のような傷になっていた。

今回はさすがに気になったが、気にしていても解決できない。

俺は、とにかく目の前の勉強に集中しようと考えた。

5日目の朝。

またもや左腕には切り傷があった。

今度はまた横に一本。

3日連続で、つけられたキズは漢字の「土」のような字に見えた。

こうして、6日、7日、8日、9日、10日、11日と、朝起きるたびに傷が増えているのだ。

そして、どうやらそれは文字になっているようだった。

12日目の朝、俺の心は爆発した。

もう、やってられっか!

今まで事を大きくしたくないから我慢していたけど、もう限界だった。

俺にいたずらしてる奴を、見つけ出してやる。

12日目の朝に増えた傷で、文字がだいぶ読めるようになっていた。

最初の文字が、「土」、その次が「谷」なのだと思う。

まだ最後の「口」の字が完成していないから、完全ではないけれど、おそらくこの犯人は「土谷」と書こうとしているのだ。

人の名前だろうか。

それとも地名だろうか。

どちらにしても、俺はそんな人も地名も知らない。

犯人探しの方法を、考えた末、俺は合宿参加メンバー(信頼できそうな奴)からビデオカメラを借りる事にした。

寝る前にカメラをこっそりとセットして準備万端だ。

これで、犯人がわかる。

俺は、その日も眠ることにした。

・・・・・・次の日の朝。

早めに起きた俺は、早速ビデオを再生してみる。

寝ている俺がしばらく映し出されていたので早送りした。

犯人が映るまで早送り。

真夜中頃、俺がむっくりと上体を起こしたのが映っている。

俺は、夜中に起きた覚えはない。

不思議に思って見ていると、俺は夢遊病のように動いている。

そして、今まで眠っていたベッドを裏返すと、ベッドの下からナイフのようなものを取り出した。

そして、自分の腕に傷をつけていた・・・・

映像を見て、唖然とした。

こんな事をした記憶はまったくないのだ。

今までの事は、俺が自分でやっていたのだろうか・・・・

背筋に冷たいモノを感じる。

自分の事が怖くて怖くて、どうしていいのかわからなくなってしまった。

12日目の朝で、腕の文字は「土谷」となっていた。

俺は、その日を最後に合宿を棄権させてもらうことにした。

もう、精神的に限界だ。

ここへはいられない。

俺は、イカレテしまったのだろうか。

ベッドの下にナイフがある事も、何で俺は知っていたのだろうか・・・・

そんなものを用意した覚えなどないのに。

・・・・不思議な事に、合宿から帰ると俺の夢遊病は、まったく起こらなくなったのだ。

あれがいったいなんだったのか、いまだにわからない。

余談だが、その後調べてみると、あの合宿の宿泊先の近辺で、二十数年前に行方不明者が出たそうだ。

あのときの俺は、なにか霊的なものに取り憑かれていたのだろうか。

何もかもが謎のままだ。

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