呪いのミイラ

女性から伺ったお話。


私が大学の時、ミイラについて研究している先輩がいた。

ミイラと言ってもエジプトのミイラではなく、日本の即身仏のことだ。

即身仏を、すごくざっくりした言い方をすると、悟りを開くために厳しい修行をしミイラになった徳の高いお坊さんのミイラをいう。

即身仏になる目的は、悟りを開くためだけでなく、飢饉や災害から人々を守るために人々の苦悩を一身に背負い祈願する……など、時代や僧侶によって様々。

世界中には多くのミイラが存在するが、自ら進んでミイラになっていくというのは、世界広しと言えども日本の即身仏くらいかもしれない。(現在の日本では、断食をし自分からミイラになることは自殺扱いになる。即身仏になることに協力しても、自殺ほう助になる)

そんな珍しいミイラの虜になっていた先輩は、論文作りのフィールドワークで非常に興味深い即身仏を見つけたと言う。

それは某所の寺に保管されているミイラで、住職の話によれば、江戸時代ごろのものらしい。

当時その土地は村があり、飢饉や災害で苦しんでいた。村の寺にいた僧侶が、村人たちを救うために苦しみを一身に背負い、即身仏となって平安を祈願することを決意した。

即身仏になるための修行は非常に厳しく、苦しいものだった。僧侶は飢えと渇きに耐え切れなくなり、籠っていたお堂から逃げ出そうとした。

それを村人たちが見つけ、嫌がる僧侶を無理やり地中に埋めるために用意しておいた木箱に押し込んで、箱に閉じ込めてしまった。木箱からは僧侶の叫び声や箱を引っ掻く音が聞こえてきたが、村人たちは即身仏になってもらうために箱を地中に埋めて放置した。

数日間は僧侶の声や箱を叩く音が聞こえていたが、やがてそれも聞こえなくなり、さらに月日が経ち閉じ込められた僧侶はミイラになったのだと言う……

現在そのミイラは寺で保管されているが、撮影禁止と言われている。昔は調査目的での撮影を許可していたが、撮影した人が次々と不幸に見舞われるという怪異が起き、あまりにも不気味だということで寺の方で禁止にしたとか。

そのような曰くつきのミイラに興味を持った先輩は、住職の目を盗んで勝手にミイラを撮影して来たと自慢していた。

「写真あるよ、見る?」

と、ニヤニヤと写真の入った封筒を後輩たちにチラつかせていた。

私を含むほとんどの生徒は気味悪がって写真を見なかったが、ある男子生徒が面白半分に写真を見た。どんなものだったか後で聞いたが、大きく口を開けて恐怖に慄いた様な表情のミイラで、見た瞬間にゾッ……とするような不気味さがあったとか……。

「卒論はこのミイラについて書くよ」

と豪語していた先輩だが、卒論を書き終える前に旅先で行方不明になってしまった。

そして写真を見た男子生徒も、先輩が行方不明になった数か月後に忽然と行方をくらましてしまった。

あれから10年以上経つが、2人の消息は今も不明のままだ。

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