箪笥の中から

女性の体験談です。


一人暮らしをしていた時、友人から古い衣装タンスをもらいました。

「お母さんが若い頃に使っていたやつで、譲ってもらったけど使わないからアンタにあげるわ」

と、いらないものを押し付けられた感がありましたが、段ボールを改造したタンスを長年使っていた私にとってはとてもありがたい贈り物でした。

そのタンスは、良く言うとアンティーク。悪く言えば年季の入った骨董品といったところでした。腰くらいまでの高さの、桐で作られた3段だけのタンスで、状態も良かったのでとても上等なインテリアに見えました。これは良いものを譲ってもらったとホクホクしていました。

しかし、タンスをもらったその日の夜から、奇妙な音が聞こえて来るようになったのです。
私がベッドで寝ていると、どこからともなく

カリカリ……カリカリ……

と、何かを引っ掻くような小さな音が耳に入ってきました。

当時私の住んでいたアパートは屋根裏を猫やねずみが走ることがあったので、また猫かねずみが悪さをしてるかのかと思いましたが、音は天井ではなく、部屋の中から聞こえて来ます。

初日は小さな音だったので、気にしないでいましたが、その音は日に日に大きくなっていきました。

おかしい。これはどこから聞こえて来るんだろう。

よく耳を澄ませると、音はあのタンスから聞こえて来ます。

カリカリ、カリカリカリ……

真ん中の棚から、内側から爪で引っ掻くような音でした。まるで「開けて、開けて」と訴えるように音は響きます。

音がどこから聞こえて来るかが分かると、途端に怖くなり、ヘッドフォンをして音楽を聴きながらその日は眠りました。

翌日、タンスの中を見ると私の衣類しか入っていませんでしたが、よくよく奥を凝らして覗いてみると、古いお札が何枚も貼り付けてありました。

何か、いる。

そう感じ取り、背筋に冷たいものが走り、ゾクリとしました。タンスを譲ってきた友人に問い詰めると、友人も同じ体験をして恐ろしくなり私に押し付けたようでした。

ひとしきり友人に文句を言い、思い切ってタンスを地元の中古品回収業者のトラックが来た時に引き取ってもらいました。

友人とは疎遠になってしまったため、あのタンスがどういう曰く付きのもので、いつからあのような物になっているのかは未だに不明ですが、近所のリサイクルショップにはまだあのタンスが売りに出されています。

もしかしたら、まだ『何か』がいるのかもしれません。

もしリサイクルショップで、中古屋には不釣り合いな上等な桐の衣装タンスを見つけても、真ん中の棚は絶対に開けないようにしてください。

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