温泉付きの旅館に、友達と泊まったとき話。
私は大学時代の友達と、ある温泉旅館に泊まりました。
とてもよい部屋でした。
食事も美味しく、温泉もすごく気持ちよかったのです。
日中は旅を満喫しました。
夜は遅くまで女同士で語り合いました。
夜も更け、そろそろ寝ようかということになりました。
電気を消し、二人は布団へ潜り込みます。
そのまま私は、すぐに夢の世界に入って行きました。
・・・夜中に、ふと目が覚めました。
身体を動かそうとしても、まったく動きません。
金縛りというやつです。
「困ったな、どうしよう」なんて思っていたのですが、部屋の中に誰かが動いているのを感じました。
友達がトイレにでも起きたんだと思いました。
目を開けてみると、やはり暗闇の中で誰かが動いているのが見えました。
暗くてよく見えないのですが、その人影は部屋の中を動き回っているようです。
かなりスローペースで、部屋の中を行ったり来たりしています。
それは、友達じゃないような気がしてきました。
友達にしては、行動がおかしい気がしたのです。
じゃあいったい誰なのでしょうか?
泥棒でしょうか・・・??
怖くなった私は、身体を動かそうするのですが、一向に動きません。
何か盗られたり、怖い思いをするのは嫌なので、その人影を目で追い続けました。
しばらく動いたその人影は、だんだんこちらに近づいてきました。
人影は音もなく、私の頭の位置まできて、その場に座り込みました。
そして、私の頭を抱えるような姿勢になり、そのまま動かなくなりました。
悲鳴を上げたくても、声が出せません。
私の位置からは、その人の顔は見えませんが、息遣いがはっきりと伝わってきます。
友達じゃないことは確かです。
私にはその人影が、中年の女性のように感じました。
・・・・しばらくすると、私の意識は遠のき、気が付くと朝になっていました。
昨日のあれは夢だったのでしょうか。
私が起きて、トイレに行こうとすると、横から友達が話しかけてきました。
「おはよう。」
「あ、おはよう。」
「ねえ、昨日の夜。起きてた?」
友達は意味深なことを言ってきます。
「あ、うん。途中1回起きたけど。」
「・・・・あのさ。中年くらいの女の人だったよね・・・・?」
その瞬間、昨日のことが夢ではなかったことが分かりました。
そうなのです。
私に見えていたものとまったく同じものを、友達も見ていたのです。
起きたばかりなのに、体中に冷や水でも浴びたかのように、寒くなってしまいました。
おそらく、顔面蒼白という言葉がぴったりな顔をしていたでしょう。
友達と、昨日見たことについて、確認しあいました。
結局、あの女の人が私(私たち)に何を伝えようとしていたのかは分かりません。
でも、私にとっては人生で初めての心霊体験で、とっても恐ろしい思いをしました。