これは、管理人が知り合いから聞いた話。
AくんとBくんは、大学の友達。
ある日の昼間。
二人で住宅街を歩いていたそうだ。
すると、少し離れたマンションの上から、ドサッドンッとなにかが降ってきた。
最初は、そのマンションの住人がベランダで布団でも干していて、それが落ちてきたのかと思ったそうだ。
だが、それはすぐに違うとわかった。
落ちてきたのは人だったのだ。
一瞬で、パニックと絶望感のようなものに包まれた。
遠目に見ても、明らかに足がおかしな方向に曲がっている。
血が飛び散っているのもわかった。
二人はその現場に近づくことができずにいたが、すぐに警察と消防(救急)に連絡した。
その後、警察から聴取された。
亡くなったのは、40代の男性だそうだ。
あまりのことに、その日は気が滅入ってしまった。
その晩、AくんはBくんの家に泊まらせてもらうことにした。
恐怖もあったが、それ以上に一人になりたくないという気持ちが強かった。
Bくんのアパートで、コンビニ弁当を二人で食べ、缶ビールを飲んだ。
あまり会話はなく、食事も進まなかったそうだ。
お互いに気が滅入っていて会話したくない、だけど一人になりたくない、という精神状態だったと思う。
そして、25時を過ぎたころ、そろそろ寝るかということになった。
電気を消し、Bくんはベッドに寝て、Aくんはソファーで横になる。
Aくんはなかなか寝付けない。
あんな現場を見たのだから当然だろう。
しばらくするとBくんが寝息を立て始めた。
「こいつは眠れて羨ましいな。」
時計に目をやる。
深夜3時。
もうすぐ朝になってしまう。
明日は、午前の大学はさぼっても良いが、夕方からバイトだった。
少しは寝たかった。
目を閉じて、しばらくすると夢の世界に旅立つことができた。
が・・・・
急に苦しくなった。
何が何だかわからない。
Aくんが目を開けると、暗闇の中で誰かに首を絞められていた。
苦しさから逃れるため、とにかく暴れた。
腕を振り回し、足をばたつかせた。
なんとか、首から相手の手が外れ、息ができるようになった。
喉が焼け付くようで、何度も咳をした。
咳をしながらも横を見ると、白目をむいたBくんが、顔をこちらに向けていた。
辺りはまだ暗いが、その顔ははっきりと見えた。
Bくんとは1年以上の付き合いがあるが、そんな顔は初めて見た。
全身に鳥肌がたった。
この状況をどうにかしなければならない。
AくんはBくんの頬を思い切りはたいた。
バチーンっと良い音がして、Bくんは我に返ったそうだ。
Bくんはなぜか激しく息をしていて、少しすると「何?なんで起こすの?」と意味不明なことを言っていた。
自分がしたことを覚えていないというのだ。
Bくんはとても良い奴で、友達の首をいきなり絞めてくるような奴ではない。
むしろ、良い奴すぎるくらいの奴だ。
そんなBくんが、白目をむいて自分の首を絞めてくるなんて、信じられなかった。
Aくんは今起こったことを、Bくんに説明した。
だが、Bくんは信じない。
「ウソだろ?俺、そんなことしないし。」
自分がもしも無意識のうちにそんなことをしていたら、恐ろしいと感じたのかもしれない。
絶対に認めなかった。
昼間見た自殺のことが関係があるのかどうか、わからない。
霊的なものなのか。
それとも、あまりにショッキングな経験で一時的にBくんの精神が錯乱してしまったのか。
理由は不明だが非常に恐ろしい経験だったと、Aくんは語っていた。