山小屋の窓から覗くマッドピエロ

かれこれ10年ほど前の話。

友達から「山にある別荘に遊びに行かないか?」と誘われた。

別荘という非日常的な響きを聞き、俺は二つ返事でオッケーした。

親戚の会社の別荘らしい。

放置するよりは、たまには人が入った方がいいということで、話が回ってきたそうだ。

当日は、電車に揺られること数時間。

電車を降りると、今度はバスに乗った。

バスから降りると、今度は徒歩で山道を歩く。

男二人でずいぶんと遠くに来たもんだ。

ふと携帯で時間を確かめようとすると、電波が届いていない。

おいおい、嘘だろ。

ここは、電波も届かない場所なのか・・・

やっとのことで、別荘に辿り着いたのだが、事前にイメージしていた高級なロッジという感じではなかった。

別荘というより、山小屋と呼んだほうがしっくりきそうな建物であった。

中に入って、まずやることは建物内の掃除だ。

部屋、トイレを掃除し、布団を干してと大忙しだ。

掃除中、過去見たこともないようなデカい虫をたくさん見かけた。

俺はここに来たことを少し後悔し始めていた。

一通り掃除が済むと、二人で食事にすることにする。

気が付けば夕方だ。

今日は朝飯以降、何も食べていない。

腹ペコのまま、二人でレトルト食品を温めた。

レトルトでも、空気が良い山で食べると、とても美味い食事に早変わりだ。

二人は夢中で平らげた。

携帯の電波も届かず、テレビもなく、普段と全く違うこの空間。

だけど退屈はしなかった。

友達との会話は尽きず、ソファーに座りながらビールを飲んだ。

ゆったりとした時間を過ごしていた。

この時間になると、やはり来て良かったと思えていた。

もう、窓の外は真っ暗だ。

時刻は20時を過ぎている。

そのとき、友達がおかしなことを言いだした。

「なあ。今、窓の外で何か動かなかったか?」

一瞬、ドキッとする・・・

熊だろうか。

二人で窓の外に近づき、外を見ようとした。

暗くてよく見えない。

「気のせいかな?」

友達は自信なさげに言う。

気のせいだということにして、俺たちはまた先程座っていたソファーに腰かけたのだが。

ソファーに座った直後。

今度は俺が、窓から外に人影を見た。

人影というより、人を見てしまった。

窓から誰かがこちらを覗いているのだ。

窓の外は暗くて見えないのだが、窓にぴったりと張り付いていれば話は別だ。

窓からは、ピエロがこちらを覗いていた。

窓ガラスにピッタリと張り付いたピエロが、こちらをじっと見ていたのだ・・・・

続き→山小屋の窓から覗くマッドピエロ2

スポンサーリンク