大工をやっているAさんと、居酒屋で話した時のこと。
管理人が聞いた。
「今までに心霊体験とか、怖い経験ってありませんか?」
そう質問すると、1つだけあると答えてくれるAさん。
この話は、Aさんが高校時代の話だ。
当時、地元の暴走族に所属していた。
夜な夜な、近所の空き地や駐車場などにたむろしていたそうだ。
ある日。
暴走族仲間たちで、墓場で飲み会をやったらしい。
墓場飲み会を開いた理由は分からないそうだ。
酒が入るごとに、羽目を外すやつも出てくる。
中でもBは、調子に乗るタイプで、悪ノリをしすぎてしまった。
墓場の板塔婆(いたとうば)を、かき集めてきて火をつけた。
なんと、板塔婆で焚き火をするというシャレにならないことを始めたのだ。
さすがに、仲間内でも引いている奴もいた。
だが、酒が入っていることもあり、大笑いしてる奴の方が多かった。
仲間の一人が、そんな悪ふざけをしているみんなの記念撮影をしていた。
当時はまだデジカメなどない時代で、使い捨てカメラを使って撮影した。
それから数日後。
その現像した写真を見たときに、多くの仲間たちの顔が青ざめた。
「これ、さすがにヤバくねえか?」
なんと、板塔婆を燃やしたBの肩に白い手が映りこんでいた。
Bが写っている写真のすべてに手があるのだ。
しかも、その手というのが、5本の指すべてが明後日の方向に曲がっている。
誰かのイタズラではないことが一目でわかる完ぺきな心霊写真だった。
当の本人であるBは内心怖かったであろう。
だが、その写真を見て大笑いしていた。
そして、その写真をかき集めて燃やし始めた。
いつもの悪ノリだ。
しかも、またもやその悪ノリに便乗した奴がいて、心霊写真を燃やすBの姿を使い捨てカメラで撮影した。
それからまた数日後。
写真が出来上がった。
それを見た奴らは絶句した。
心霊写真を燃やしたときに出た煙が、人の顔の形になっているのだ。
なんとなく人の顔というレベルではなく、完全に人の顔そのものだった。
Bは、それを見て顔をひきつらせながらも、笑っていたらしい。
もう笑うしかなかったのかもしれない。
一月後。
Bは亡くなった。
ノーヘルでバイクに乗っていて、トラックと衝突したのだ。
即死だったという。
板塔婆を燃やしたから呪われたのか。
心霊写真を燃やしたから呪われたのか。
それともすべては単なる偶然なのか。
今は更生し、立派な社会人をやっているAさんは言っていた。
「俺、幽霊とか完全には信じてないですけど。あまりに罰当たりなことは良くないと思いますね。Bの一件以来、何となくですけど、あまりに酷いことはしない方が良いと思うようになりました。」
終わり