前回→女性の浮気の代償 死んだ彼氏の祟り2 (→1話から読む)
「一つだけ方法がないことはないのですが・・・あまりおすすめできる方法ではありません。」
「何でもします。彼に謝りたい。自分のしたことを彼に謝りたいんです。」
このときのA子さんは、彼のことが怖いとか、彼に許して欲しいというよりも、とにかく彼に謝りたいという気持ちが強かった。
自分を責める気持ちでいっぱいだったのだ。
Bさんは言った。
「あなたの母方のお婆ちゃんいますよね。ずいぶん前に亡くなられていますが。」
「・・・ええ。もう10年前に亡くなりました。」
「そのお婆ちゃんに協力を願います。」
「え?おばあちゃんに?」
「そうです。実は、お婆ちゃんは、ずっとあなたを助けたいと仰っています。少し複雑なのですが・・・簡単に言うと、あの世の人間がこの世の人間を直接助けるのは、お婆ちゃんに大変迷惑がかかる行為なのです。お婆ちゃんは自分への迷惑などいいから、あなたを助けたいと言っていますけどね。」
「お婆ちゃん・・・」
A子さんは子供の頃、大のおばあちゃん子だった。
両親よりもおばあちゃんと一緒にいる時間の方が遥かに長いくらいだったのだ。
Bさんは言う。
「お婆ちゃんの助け無くして、この問題は解決できないでしょう・・・」
A子さんは、死んだお婆ちゃんに心配も迷惑をかけたくなかった。
あの世で安らかに眠っていてほしかった。
でも、それ以上に彼氏に謝りたい気持ちがあった。
迷った末、A子さんはお婆ちゃんへの協力を仰ぐことにした。
「お願いします。お婆ちゃんに協力してもらいます。そして、“お婆ちゃんごめんね。そして、ありがとう。今までもこれからも、ずっとずっと大好きだよ”と伝えてもらますか?」
すると、Bさんは初めて表情を崩し、言った。
「その言葉、もう伝わっていますよ。もうここにいますから。」
その時その場には、お婆ちゃんの香りがした。
本当にここにお婆ちゃんが来ていることを確信し、温かい気持ちになれたという。
Bさんは、続けた。
「あなたは、今日の夜眠ると、彼に会えます。そこにいる彼は、怨みに支配された鬼のような彼ではなく、生前のままの姿です。しっかり話し合って、ご自身の気持ちを伝えてください。一度きりのチャンスですよ。」
A子さんは、Bさんにとにかくお礼を言った。
お金はいらないと言われたものの、それでは彼女の気持ちがおさまらず、お礼を渡した。
そして、その夜。
A子さんは睡眠薬無しで、すんなり眠りに入ることができた。
とても広い草原のようなところにA子さんはいた。
風が全くなく、重力も感じないのだが身体は浮くわけでもない、不思議な空間だったそうだ。
そこに、どこからともなく彼が姿を現した。
睨んでもおらず、首も絞めては来なかった。
そこで、A子さんはとにかく泣いて謝った。
自分のしたことを悔やみ、彼に自分の気持ちを伝えた。
彼は言い返してくることはなく、黙って話を聞いてくれていたという。
A子さんは、自分で何を言ったのかの詳細は覚えていないのだとか。
でも、全体の流れとしては
「あなたを傷つけてしまって本当に後悔している。死ぬべきなのはあなたではない。私の方だ。もしも、私を許せないのなら、私を道ずれにしてほしい。二人で天国にでも地獄にでも行く。」
そのことをしっかりと伝えたという。
彼は、話を聞き終わると、複雑な表情をした。
泣いているような、笑っているような、困っているような表情だった。
そのまま、A子さんの頭をポンポンと叩いて消えてしまった。
でも、自分のことを許してくれたことがはっきりと伝わってきた。
そして、その夢が醒める直前。
はっきりと、お婆ちゃんの声を聴いたのだ。
「まったく、世話が焼けるね。もう、これで最後だよ。次何かしてもあたしは助けないからね。」
そう言って、笑っているお婆ちゃんの声を聞いたのだった・・・
起きてみると、A子さんは大量の涙をこぼしていた。
そして、温かい気持ちに包まれていたという。
それ以来、彼が夢の中に現れることも、お婆ちゃんが現れることもなくなった。
ホッとした半面、二人に会ないのは少しだけ寂しい気持ちもしたという。
これが、A子さんが20年前に体験した話。