小学生夏休みの恐怖 家出と怪人6

前回→小学生夏休みの恐怖 家出と怪人5   (→1話から読む)

朝になるまで、俺は近所の公園の滑り台の下で過ごした。

夜の公園は多少怖かったし、蚊にも刺されまくった。

でも、さっきまで感じていた強烈な恐怖に比べたら、どちらも大した問題ではなかった。

この辺りの時間帯のことは、正直言ってあまり覚えていない。

おそらく、とてつもなく疲れていたから。

・・・・朝になると、自宅に帰りすぐに眠ってしまった。

風呂も入らず汚れたままの身体だったが、とにかく眠りたかった。

なにせ、人生でこんなに起きていたことが無かったのだ。

・・・・母親に起こされるまで、一度も起きなかった。

気が付くと、いつの間にか夕方になっていた。

母親は心配していたらしい。

明け方に帰ってきたと思ったら、服は汚れているし、何も話さないで眠ってしまったのだから当然かもしれない。

俺は、昨日のことを正直に話すわけにもいかずに、適当な受け答えをして切り抜けた。

母親は不安そうな表情をしていたが、一応は納得してくれたのだろう。

伝言をくれた。

「●●くんと、○○くんと、××くんと、△△くんたちから、何度も電話あったよ。今、寝てますって答えておいたけど。」

そうか、みんな無事だったのか。

「ユウタ、ユウタからは連絡あった?」

「ユウタくん?ユウタくんからは、ないけど。」

ユウタのことだから大丈夫だとは思ってはいるが、やはり心配になっていた。

まだいろいろ尋ねて来る母親を、適当にあしらい続ける。

今は母親のことよりも友達と連絡を取らねばならないのだ。

すぐに昨日の友達6人へ連絡をした。

そして、連絡のついた奴らで今から公園に集まることになった。

・・・・公園には、6人全員が集まった。

ユウタも来ていたのだ。

俺は、ここにきて初めて心からホッとできた気がした。

皆の話を聞く限り、4人はすぐに表に飛び出し自転車で逃げ出していたのだそうだ。

ビル内に残ったのは、俺とユウタだけらしい。

そう、俺のピンチを偶然にも救ってくれたのはユウタだったのだ。

ユウタもその後、男をうまく撒いて、何とか逃げられたらしい。

勝手ながら、残ったのが俺とユウタで良かったと思った。

それ以外の奴らなら、きっと男に捕まっていたんじゃないかと思えた。

皆でいろいろ話しているうちに、俺たちは大冒険をしたような気分になってきていた。

やったことといえば、家出したここと、謎の男から逃げ出したことだけだ。

でも、自分たちがとんでもない偉業を成し遂げた英雄のような気になってきた。

だから、昨夜の話でおおいに盛り上がった。

・・・・それから1か月ほど過ぎたであろうか。

自分たちの武勇伝も自慢し飽きた頃。

地元のニュースで、ある事件が取り上げられた。

覆面の男の通り魔事件だった。

通り魔に襲われた人が、地元でちょこちょこ現れ出したというのだ。

目撃者の話によると、犯人は覆面を被っていたとのことだった。

俺たちは、すぐに「あの時の男だ」と直感した。

やはり、あのときもしも男に捕まっていたら、殺されていたかもしれなかったのだ。

今、皆が無事でいることが奇跡のように思えてきた。

この話に後日談はない。

結局、その通り魔が捕まったのか捕まっていないのかすら、俺は知らない。

だけど、あんなスリリングな経験は、なかなかできないような気がする。

今となっては、飲みの場でのちょっとした自慢話のようになっている。

終わり

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