小学生夏休みの恐怖 家出と怪人5

前回→小学生夏休みの恐怖 家出と怪人4   (→1話から読む)

懐中電灯の明かりが、俺のいる室内を照らし始めた。

丸い円状の光が、一瞬俺の足元をかすめる。

もう、口から心臓が飛び出してしまうのではないかと思えた。

捕まったら何をされるのか分からない。

最悪殺されてしまうだろう。

大声で泣き出したい衝動に駆られるも、泣いてしまったらそれこそ終わりなのだ。

泣くことを必死でこらえ、出来る限り身を小さくした。

でも、俺は薄々感じていたんだ。

もう、これで終わりなのだ、と。

逃げ場はない。

戦うのは無駄だろう。

絶望的だった。

おそらく、男が室内へ懐中電灯を向けている数秒の間に、俺は膨大なことを考えていた気がする。

そして、悟っていた。

もう、死ぬのだと・・・

俺が自分の死を覚悟しかけていた、そのとき。

廊下で、誰かの走る音が聞こえた。

ダッダッダッダッダッダッダ・・・・

男の足音ではない。

きっと、友達の誰かが

廊下のどこかに隠れていて、走り出した音だった。

次の瞬間、男の怒鳴り声が聞こえた。

「待て、コラ!クソガキっー!!」

そして、男の足音は遠ざかって行った。

俺はホッとした。

言葉では言い表せないくらいホッとしていた。

もう、あまりにも体中の筋肉がゆるんでしまい、おしっこを漏らしてしまうのではないかと思えるくらいに。

友達の足音が聞こえるのが後数秒遅かったら、俺は男に見つかっていただろう。

あの男が何者なのか知らないが、こんな夜中にこんな廃墟のビルで覆面を被っているくらいだ。

きっと危ない人間に違いない。

何が何だか分からぬまま、俺はその場にへたり込んでしまっていた。

・・・・・どれくらい経過しただろうか。

もう、誰の足音も聞こえないし、声も聞こえない。

フラフラしながら、俺は1階出口へと向かった。

自転車は、ビルの入り口から少し離れた場所に停めてある。

自転車のところまで行くと、そこには2台しかなかった。

6台停めてあったはずだ。

そうか、みんな逃げたんだなと、理解する。

俺も自転車にまたがり、残りの自転車は誰の物かを確認した。

ユウタの自転車だった。

その時、俺は少しだけ安心した。

ユウタなら、きっと大丈夫だと思えたからだ。

自分の身の安全が確保されると、今度は友達の身が心配になる。

ほとんどの奴は逃げたみたいだけど、自転車を見る限りユウタだけがまだビル内にいるらしい。

ユウタは、仲間内で一番頭が良い。

勉強ができるという意味じゃない。

頭の回転が速いのだ。

そして、運動神経も良い。

あいつならきっと捕まらない。

そんなことを考えながらも、俺は猛スピードで自転車を漕いだ。

暗い夜道、ひたすら自転車を漕いだのだ。

続き→小学生夏休みの恐怖 家出と怪人6

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