小学生夏休みの恐怖 家出と怪人3

前回→小学生夏休みの恐怖 家出と怪人2   (→1話から読む)

懐中電灯は点けられない。

俺たちの存在がバレてしまったらまずいのだ。

窓から差し込む月明かりと、暗闇に慣れてきた瞳を頼りに、そーっと部屋を出た。

この状況を舐めているのか、はたまた本気で不器用なのか、友達の誰かが音を立てながら歩いている。

俺は本気で腹が立った。

つま先からゆっくり足を踏み出さずに、かかとから歩いてしまっているのだ。

バカな友達にイライラしながらも、部屋を出る。

廊下に出てみると、隣の部屋の扉は少しだけ開いていて、光が漏れていた。

部屋の中には誰かがいて、きっと懐中電灯を点けているのだろう。

誰なんだろう・・・

こんな時間に、こんな場所で、一体何をしてるんだ・・・・

さっきは友達の手前、ビビっていることを表に出せなかったけれど、この状況が本気で怖かった。

出来れば、今すぐにでも逃げ出したかった。

この不気味な雰囲気は、言葉では伝わらないかもしれない。

得体の知れない何かが、すぐそばにいるような感覚。

そんな恐怖の中、ゆっくりと前進した。

なんとか隣の部屋の前までたどり着くと、皆は顔を見合わせる。

そして、部屋の中を指さし合った。

「中を覗こう」というジェスチャーだろう。

心の99%は、恐怖に支配されている。

そして、1%は好奇心。

1つの扉を6人で覗くのは窮屈だった。

いや、それとも怯えているからなのか、皆は身体を押し付け合うような形で、部屋の中を覗いた。

中には、大人の男が一人見えた。

スーツを着ている。

いいや、正確に言えばスーツを脱いでいるところだった。

こんなところで、こんな時間に何してるんだろう。

男は、懐中電灯の明かりを上手に使いながら、スーツからジャージのような格好に着替えていた。

そして、最後にはなぜだか銀行強盗が被るようなマスクを顔につけた。

顔全体が隠れて、口と目だけが空いているニットのマスクだ。

夏に、ニットのマスク。

どう考えてもおかしい。

男は着替え終わると、こちらをぱっと向いた。

何かに気が付いたというよりも、部屋を出ようとしただけかもしれない。

おそらくこの時点では、明暗差で俺たちのことは見えていなかったはずだった。

それなのに、友達の誰かがビビッて逃げ出したのだ。

後先を考えずに、音を立てながら走り出したのだ。

「くそ、バカっ!」

心の中で叫んでも意味はなかった。

廊下で誰かが走る音を聞いて、部屋の中にいたマスクの男が叫んだ。

「誰だっ?そこにいるのはっ?!」

続き→小学生夏休みの恐怖 家出と怪人4

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