物や場所には、念が残ることがあるという。
念は、喜びや後悔などの感情が強ければ強いほど、より強力に物や場所に記録される。
今回は、ある女性の強い恨みの念がその場所に残ってしまった、という話。
霊感の強い女性、仮にAさんとしておこうか。
Aさんは、あるとき街でナンパされた。
普段なら無視するところだったが、その男性とてもイケメンだった。
なにより、昔好きだった人に似ていた。
少し会話してみると、話もとても面白かった。
時間もあったことから、少しだけ飲みに行くことにした。
飲みに行ってみると、やはり彼は楽しい人だった。
「ああ、こういう男性と付き合ったら、きっと毎日笑顔になれるだろうな。」
少しずつ、彼に惹かれていくAさん。
出会ったばかりだというのに、飲んだ後に彼の家に遊びに行ってしまった。
彼の住んでいるのは、新築のアパートだった。
入居するのは、彼が初めてらしい。
中に入ると、新築の建物の匂いが鼻をかすめる。
彼は、「あ、今お茶入れるね。」と、キッチンへ行った。
部屋に一人になったAさん。
突然、頭の中にある映像が浮かんできた。
・・・・・その瞬間、酷く恐ろしくなってしまった。
隣のキッチンにいる彼のもとへ行き、聞いてみた。
「あのさ、ここに住むのあなたが初めてなんだよね?」
「ああ、そうだよ。ここは新築だから、前に住んでいた人間はいないよ。」
「この部屋に、誰か、女の子連れてきたことない?」
「女の子?君が初めてだよ。俺は君が思っているほど遊び人じゃないよ。なんで、そんなこと聞くの?」
笑顔で言っている彼に、不信感を募らせてしまう。
「じゃあ、赤い服着た女の子は誰?」
「・・・・・え?」
「赤い服着た女の子で、髪の毛は茶色の子。眼鏡もかけてた!」
「・・・なんで、なんで?知ってるの・・・?」
Aさんは怖くなり、自分の荷物を掴むとその部屋を飛び出した。
そして、もう2度とナンパにはついていかないと硬く誓ったのだった。
Aさんが、彼の家で見てしまったもの。
それは、その部屋で乱暴される女の子の姿だった。
彼が、赤い服を着た女の子に睡眠薬入りの薬を入れたお茶を飲ませ、乱暴しているのが見えたのだ・・・
幻覚かもしれない。
頭の中の幻覚を信じるなんて、どうかしている・・・・
Aさんはそう思った。
だから本人に確認してみたのだ。
そして、彼はその赤い服の女性のことを知っていた。
乱暴された女の子の、強い後悔と怨みの念はその場には漂っていたのだろう・・・・
それは、吐き気がするほど強烈な怨みだったようだ。
終わり