追いかけてくる日本人形4

前回→追いかけてくる日本人形3   (→1話から読む)

会うたびに、どんどん近づいている日本人形。

おそらく、今日中には俺の家の中に入って来そうな勢いだった。

最後に見たのは、昨晩だ。

自宅アパートから、10メートルほどの距離に座っていた。

今までのペースで考えると、おそらく今日が危ないと思われた。

もうすぐだ。

もうすぐ、人形が家の中に入ってきてしまう・・・・

人形が自宅アパートに入って来たら・・・・

いったい、俺はどうなってしまうのだろうか・・・・

何か対策を立てなければならない。

電話帳を見ながら、何人もの友達に電話をした。

「今日、お前の家に泊めて欲しい。もしくはうちに泊まりに来て欲しい。」

俺は、正直に理由を伝えた。

すると、全員に断わられた。

正直に説明したのは、バカだったかもしれない。

でも、このことだけは伝えておかねばならないと思えたのだ。

きっと、それは命にかかわる問題だから。

唯一、一人だけ興味を示した友達がいた。

だが、あいにく深夜のバイトで家に来られないのだという。

俺よりもバイトを優先させるのかと、怒鳴りたい気持ちにもなったが、そんなことはできなかった。

他にも、いろいろ考えて対策を練ろうとした。

だが、一向に良い案は浮かばない。

そのまま、夜になってしまった。

今までの経験を踏まえると、日本人形は日が暮れてから現れる。

日のある時間に見かけたことは一度もなかった。

つまり、夜は危険な時間なのだ。

お金があれば近所のシティホテルにでも泊まりに行ける。

だが、俺にはホテル代すら払える余裕はなかった。

外で野宿も考えたが、外の方が危険な気がする。

漫画喫茶はどうだろうか。

だが、近所の漫画喫茶を知らなかった。

当時はまだ、スマホのない時代だ。

家にPCがない人間には、手軽にネット検索ができなかったのだ。

駅前にはなかった気がする。

探してみるのはどうだろうか。

だが、あてもなく外に出る方が危険な気がする。

そうしている間にも、時間はどんどん経過していく。

・・・20時

・・・・21時

・・・・・22時

何も対策を立てられぬまま、ついにそのときが来てしまったのだ。

俺がベッドの上に座っていると、どこからともなく音が聞こえてきた。

キィーキィー

キィーキィー

ブランコがないのに、ブランコの音だった。

来た・・・・

そして、ブランコの音とは違うものも聞こえてきた。

「・・・ふふふ・・・・ふふふふ・・・・」

不気味な笑い声だった。

男なのか女なのか分からない、気味の悪い笑い声だった。

高くもあり低くもある。

老人のようであり子供のような声。

どう表現したらいいか分からない。

ブランコの音もどんどん大きくなっていく。

キィーキィー

キィーキィー

「・・・ふふふ・・・・ふふふふ・・・・」

俺の部屋はワンルームなのだが、玄関口から部屋まで少しだけ廊下のようなスペースがある。

廊下に、日本人形が座っているのが見えてしまった。

(画像は管理人が話を元に作ったもの)

部屋の中に入って来ていたのだ。

俺は凍りついた。

そして、絶望を感じ始めていた。

もうダメかもしれないのだ。

日本人形は、俺の恐怖心を煽るかのように、ミリ単位で近づいてきているような気がした。

ジワジワ、ジワジワ近づいてくるのだ。

おそらく、気のせいではない。

少しずつ、少しずつ、こちらに近づいてきていた。

人形がゆっくりしか動かないなら、その間に逃げ出るしかない。

部屋はアパートの二階だった。

窓から飛び降りられるはずだ。

俺は立ち上がり窓に駆け寄ると、鍵を開け、窓を開こうとした。

・・・?!

開かない・・・

なぜだか、窓が開かないのだ。

鍵は開いている。

でも、開かないのだ。

なぜだ。

なぜだ。

開け、開け。

どんなに頑張っても、窓はピクリともしない。

なにか強力な力が働いているとしか思えなかった。

「ふふふ・・・・ふふふふ・・・・」

後ろからは、またあの不気味な笑い声が聞こえてくる。

もうダメだ・・・・

誰か助けてくれ。

振り向くと、日本人形はもう部屋中の前まで来ていた。

だが、ここからが不思議だった。

人形は一向に部屋の中に入ってこないのだ。

一分経っても、二分経っても入ってこない。

・・・・・・・・・・・・・

どれくらい時間が経過しただろうか。

突然日本人形の首が動き、俺の少し横あたりを見た。

そして、言った。

「それ嫌い!」

そう、はっきり言ったのだ。

次の瞬間、日本人形は消えていた。

しばらくの間は動けなかった。

・・・やっと動けるようになった俺は、フラフラになりながらも立ち上がった。

そして、窓を開けてみた。

窓をすんなり、開いた。

助かったのだろうか。

気が付くと、俺はシャワーでも浴びたように体中がビッショリだった。

大量の汗をかいていたようだ。

それにしても「それ嫌い!」の意味が分からない。

いったい、どういうことなのだろうか。

俺は、人形が最後に見ていた辺りに近づいた。

そこには、棚があるだけだ。

・・・ふと気がついた。

そこには護符が置いてあった。

半年前に、開運のために買った物を棚の上に置いていたのだ。

これが守ってくれたのだろうか。

俺はその後、調べてみた。

護符とは。

持ち主に幸運をもたらすだけでなく、魔除けの効果があるということだった。

護符のお陰で俺が助かったのかどうかは分からない。

でも、俺はそれ以来、護符を大切に扱うようにした。

もしも、また何か悪いモノが憑いたときは、きっとこいつが守ってくれるような気がしたからだ。

命の恩人と呼んでもいいかもしれない。

他人は笑うかもしれないが、一生の宝にしようとも思っている。

終わり

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