前回→追いかけてくる日本人形2 (→1話から読む)
俺はそれでも疲れのせいにした。
そう思わないと恐怖に押しつぶされそうになる。
もしも、今見たものが現実だとしたら、まるで日本人形に追いかけられているように思える。
そんなホラー映画のようなことが、あるとは思えない。
窓から一瞬見えただけだし、きっと見間違いだ。
暗かったのだ。
なによりも、恐怖を感じていた。
怖がって日本人形のことをばかりを考えていたから、幻覚を見てしまったのだ。
そうやって、自分を落ち着かせようとした。
電車に乗っている間、そのことが頭から離れなかった。
電車は乗り換えの駅に到着した。
この駅での乗り換えは、一度駅の外に出る。
俺は、駅の改札を抜けて道路を歩いた。
途中、ショーウインドウに映った自分と目が合った。
疲れた顔をしていた。
やはり疲労による幻覚説は濃厚かのしれない。
そう思った瞬間だった。
ショーウインドウに日本人形が映っていた。
ガラス越しに、俺の方を見ていたのだ。
俺の左後ろ50センチの位置だった。
人形は、宙にフワーっと浮いているように見えた。
俺はもうパニックだった。
暴れるようなしぐさで、後ろを振り返る。
でも、その空間には何もなかった。
もう一度、ショーウインドウに目線を戻した。
すると、いるのだ。
ガラス越しには見える。
人形は、宙に浮いて顔だけをこちらに向けていた。
俺は走った。
不格好な走り方をしていたかもしれないし、悲鳴を上げていたかもしれない。
ここは街中だが、今は周りの目など気にしている余裕はない。
駅に駆け込み改札を抜け、ホームで電車を待った。
電車を待つ間も、キョロキョロと辺りをうかがった。
きっと、周りにいた人からは挙動不審な人物だと思われていただろう。
何度も何度も、辺りを見回す。
得体のしれない日本人形について来られる恐ろしさといったら、言葉にできない。
どうすればいいのか分からなかった。
なんとか、最寄り駅まで到着した。
駅から自宅までは、周りが見えなくなるくらいガムシャラに走った。
自宅を、あの人形をに知られたくなかったのだ。
自宅に帰り着くと、すぐに鍵を閉めた。
そのまま布団にもぐって、思いつく限りのお経を唱え続けた。
そして、心の中で神に祈った。
助けてください。
もう2度とあの人形と会わないようにしてください。
だが、俺の願いは虚しく・・・・
それからも俺はいたる所で、日本人形を目撃することになる。
そして、あることに気がついてしまった。
あの日本人形は、俺の自宅に少しずつ近づいて来ているのだ。
最初に見たのは地方の公園、次が電車の中、その次は乗り換えの駅のそば。
それ以降も、どんどん自宅へ近づいてきていた。
このままのペースで行けば、近いうちには自宅まで来てしまいそうだった。
得体の知れない人形を自宅へご招待だなんて、笑えない。
もしも、家の中にあの日本人形が入ってきてしまったら、俺はどうなってしまうのだろうか。
殺されてしまうのだろうか。
続き→追いかけてくる日本人形4