追いかけてくる日本人形2

前回→追いかけてくる日本人形

日本人形がブランコを漕いでいた。

俺は、全身に冷や水を浴びたかのように鳥肌を感じた。

頭は真っ白になったが、体は正直に反応した。

俺は来た方向に向かって走り出していた。

おそらく、相当みっともない走り方をしていたと思う。

あまりの恐怖で、走り方も忘れてしまったのかもしれない。

それでも、無我夢中で走った。

辺りは暗闇だ。

何度も転んだ。

だが、痛みは感じなかった。

走っている間も、音は聞こえてきた気がする。

キィーキィー

走るのをやめたら最後、命を奪われてしまうという、恐怖心が生まれていた。

気がついたときには、宿泊先の前まで来ていた。

息が苦しい。

とにかく中に入ろう。

俺の呼吸音が大きいためか、ブランコの軋む音は聞こえてこない。

おそらく距離的に聞こえないはずなのだ。

だが、それでもどこか不安が残っていた。

気を抜けば、今度はすぐそばから「キィーキィー」という音が聞こえてきそうな嫌なイメージが湧いてくる。

・・・・その日は、耳をふさいで布団を頭までかぶって目を閉じた。

なかなか寝付けなかったが、いつの間にか眠ってしまった。

眠れてよかった。

次の日。

朝一番で、宿泊先の人に聞いてみた。

「山の途中の公園は、どんな場所なのか?」

「この辺りに。なにかいわく付きの場所があるのか?」

「日本人形に、まつわる怪談はあるか?」

思いつく限りの質問をした。

複数の人に聞いてみたのだが、誰もそんな話は聞いたことがないという。

俺があまりにしつこく質問するものだから、逆に質問を返された。

「何かあったの?」

俺は、正直に昨日見たものを言った。

すると、みんな同じような返事をくれた。

「疲れてたんじゃない?」

何人もにそう言われると、そんな気がしてきた。

確かに、ここのところ疲れていたのかもしれない。

最近は睡眠時間が足りていない気もする。

だんだん、俺は疲労による幻覚を見たのだと、思えてきた。

気にしない方が良いのかもしれない。

単純な俺は、気が楽になってきた。

いや、疲れのせいだと思い込もうとしていたのかもしれない。

そして、無事に俺の田舎暮らしの期間が終わった。

これで、自宅に戻れるのだ。

帰る日も何かとやることが多く、帰りの電車に乗り込んだときには日は暮れていた。

俺は、窓際の席を座った。

電車では少し眠ろうと思っていたのだが、なんとなくあの日本人形のことを思い出してしまった。

あれは、疲れによる幻覚だったんだ。

そう結論が出ているはずだった。

でも、本当にそうなのだろうか。

あのとき見たものすべてが、本当に幻覚だったのだろうか。

頭の中でそんなことを考えているときだった。

どこかから、音が聞こえた気がした。

キィーキィー

そんな馬鹿なことがあるわけがない。

ここは電車の中なのだ。

ブランコがないのだから音はしない。

「俺、相当疲れてるわーー。」

俺は、わざと声に出してつぶやいた。

きっと、怖かったのだと思う。

気のせいだ、気にしてはいけない。

キィーキィー

また、聞こえてしまった。

俺はちょっと疲れすぎているようだ。

ふと窓の外を見た・・・・

今度は、見えてしまった。

時間にしてわずか1秒ほどだが、窓の外に日本人形がいるのが見えた。

窓から届く電車の光が、日本人形を捉えたのだ。

電車は走っているため、長い時間見ることは出来なかった。

でも、はっきり見えた。

窓の外に、日本人形がポツンと座っていたのだ。

続き→追いかけてくる日本人形3

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