廃村 恐怖実話3

前回→廃村 恐怖実話2  (→1話から読む)

俺の感じた違和感は、車を降りてからますます強まった。

そして、この違和感の正体に気がつき始めていた。

でも、それを認めたくない。

認めてしまったら、すべての辻褄(つじつま)が合わなくなってしまうのだ。

俺は、おじいさんの家の玄関の前に立つと、先週と同じように戸を叩いた。

ドンドンドンドン

「すみませーん。」

俺の声はむなしく響く。

そして、戸を叩いた手にホコリがつき、ホコリは宙を舞った。

くしゃみを一つすると、もう一度戸を叩く。

嫌だ、認めたくない。

何度戸を叩いても、誰も出てきやしないのだ。

だって、この家は、空き家なのだから。

空き家・・・

いや、空き家なんてものじゃない。

今にも崩れそうな家と言っても、過言ではないかもしれない。

どう見ても、先週俺が訪ねた家と同じには見えなかった。

でも、同じ家なんだ。

覚えているんだ。

先週来たときに、見た表札。

その表札とまったく同じものが、その民家にはあったのだ。

先週と違う点は、すべてが古くなっているということ。

タイムマシーンにでも乗り込んでしまったかのように、古くなっているのだ。

建物も、表札も。

俺は少なからず恐怖を感じていたが、他の民家も確認してみた。

やはり、すべての民家に人の気配はない。

ここには、生きている人間はいないだろう。

人の住めるような環境ではない。

車を降りていろいろ歩いてみて分かったが、道路から少し外れると、もう地面は荒れ果てていて、若者の俺ですら上手に歩けないのだ。

こんなところで、老人が暮らしていくことは不可能だと思う。

きっとここは、廃村なのだ。

しかも、ずいぶん前に廃村となったのだと思う。

俺は、おじいさんの家の前に羊羹(ようかん)を置き、大きな声でお礼を言った。

「先週は、ありがとうございました。お蔭で無事に家にたどり着けました。」

そして、車に乗り込むと帰路につく。

なぜだか分からないが、涙が止まらなかった。

運転中危なっかしいが、悲しくて仕方がなかったのだ。

きっと、あのおじいさんは、村への未練を残して亡くなったに違いない。

その未練がこの世に残り、あの晩、道に迷った俺を助けてくれたんだと思う。

なぜ助けてくれたのかは分からない。

でも、とても人の良さそうな人だったから。

死して尚、人助けがしたかったのかもしれないな。

終わり

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