あれは、2004年のことだった。
俺は、当時付き合っていた彼女と、真昼間のデートをしていた。
場所は千葉にある某ラブホテルだった。
泊まりではなく、休憩で入った。
室内は、電気をつけても薄暗い部屋だった。
綺麗とは呼べなかったが、汚いとも呼べないような部屋だ。
正直なところ、これで5500円は少し高いと思った。
ただ。
若かった俺は、お金のことよりも彼女との行為のほうが大切だったため、文句を言うこともなく休憩時間を楽しんだ。
3時間が経過し、二人は外に出た。
しばらく歩くと、彼女がホテルに携帯を置き忘れた気が付いた。
どじな子だった。
まあ、そこがかわいいんだなんて考えていた。
彼女をホテルの外に待たせて、俺が携帯を取りに行った。
ホテルの中に入ってみると、受付には誰もいない。
勝手に入らせてもらうことにした。
そして、先ほどまで滞在していた部屋に向かった。
部屋に入ると、まだ片付いていなかった。
出たままの状態だ。
俺たちが脱ぎ散らかしたバスローブが散乱している。
ふと見ると、奥に黒いスーツの男がいた。
中年くらいだろうか。
強面の男だった。
その男は俺の姿を見ると、びっくりした顔で手に持っていたものを隠していた。
俺は、男に言った。
「すみません。携帯忘れちゃって。」
だが、男が隠したものを見逃さなかった。
男は手に小型のカメラのような物を持っていて、それを隠したのだ。
おそらくだが、俺たちの行為を盗撮していたのだと思う。
本来なら、文句を言うべき状況だろう。
だが、恥ずかしながら、俺はその男が恐かった。
見るからに堅気ではなさそうな風貌だったため、文句でも言えば刺されるのではないかビビってしまっていた。
彼女の携帯を掴むと、逃げるようにその場を立ち去った。
それ以来、ラブホテルを利用するときは、十分に注意が必要だと感じた。
終わり