前回→ちょっとエッチな女の幽霊 本当の体験2 (→1話から読む)
俺はこの人をずっと待っていた。
会ってみて気がついた。
あの晩から、ずっと会いたかった。
それからというもの。
俺は、女の人のことを待つようになった。
来ても、すぐにいなくなってしまう女の人。
冷たい手で俺の手を握ってくれる。
その手はあまりに冷たくて、俺はトイレに行きたくなってしまうのだ。
ギリギリまで我慢するも、耐えられなくなりトイレに行く。
急いで部屋に戻っても、女の人は忽然と姿を消してしまっている。
どこから来てどこに行くのか、さっぱりわからなかった。
でも、一つだけ分かったことがある。
あの人は、俺の誕生日からぴったり一ヶ月周期で現れるってことだ。
そのことが分かってから、毎月のその日が待ち遠しくなった。
その日が近づくと、俺はソワソワしだした。
当日は髪形を気にしたり、パジャマもなるべくおしゃれな物を選ぶようになっていた。
その日も、女の人は現れた。
いつものように、俺の手を握ってくれる。
近頃の俺は、その人に話しかけるようになっていた。
でも、返事はしてくれない。
微笑みながら、黙って俺の話を聞いてくれていた。
返事をくれなくても、良かった。
俺にとって、それはとても楽しい時間だった。
そのとき・・・
急に物音がした。
ガチャ
部屋の扉が開いたのだ。
焦った。
そして、素早く部屋の入り口に目を向けた。
そこには、母親が立っている。
廊下との明暗さで見えにくいが、怪訝そうな顔をしてこちらを見ているのがわかった。
「起きてるの?」
俺はどうしていいのか、分からなかった。
女の人のことを、どう説明したらいいのだろう。
終わった。
絶望的だった。
小学生の俺には、その状況がこの世の終わりのように感じられた。