実話・南千住の怪談2

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深夜の2時近く、着物を着た女性がこんなところで何しているんだろうか。

不思議に思ったものの、それほど気にしなかった。

疲れていて、それどころではなかったのかもしれない。

すると、真後ろで声がした。

俺はきっと、ビックッとなってしまったと思う。

振り返ると、先ほどの着物の女性が立っていた。

小さな声で俺に話しかけてきたのだ。

俺と女性の距離は10メートル以上は離れていた。

それを確認したのはわずか数秒前だったのだ。

足の痛い俺は、確かにゆっくり歩いていた。

でも、進んでいたのだ。

女性が走れば別かもしれないが、10メートルの距離を数秒で縮められるものだろうか。

しかも、物音は一切しなかったのだ。

と、ここまで冷静な分析はあのときの俺はできなかった。

だが、少し不気味さは感じていた。

女性は小さな声で、俺に聞いてきた。

「コヅ・カ・×××・・じょ・どこですか?」

どうやら道を尋ねているようだった。

コヅカなんとかという場所に行きたいらしいが、よく聞き取れない。

仮に聞き取れても、俺は東京の人間じゃないため答えられない。

「あの、すみません。俺、この辺の人間じゃないんすよ。」

俺がそう言い終わるか終わらないうちに、女性はさびしそうな顔をして返事をした。

「わ・かりました・・・」

これまた、小さな声だった。

俺は、再び歩き出しながら考えた。

少し冷たかっただろうか。

もうちょっと親切にした方が良かっただろうか。

たとえば、一緒に場所探しりすべきだったのではなかろうか。

真夜中、道に迷って困っているのかもしれないのだ。

最後に女性の見せたさびしそうな顔を思い出して、罪悪感を感じてしまっていた。

「うん、今からでも遅くはない。一緒に探してやろう。」

そう思って、俺は振り返った。

だが、そこに女性の姿はなかった。

俺が前を向いていたのは、せいぜい10数秒だった。

その間に忽然と姿を消した女性。

あたりを見渡したが、曲がり角もなければ、身を隠す場所もない。

俺は全身に寒気を感じた。

どこに消えたというのだ。

足の痛みや疲れは吹き飛んでしまった。

とんでもない恐怖感に襲われてしまった。

そのまま、走って家に帰った。

家に帰り着いた後も、しばらく震えが収まらなかった。

女性に何をされたわけでもない。

だが俺は恐怖を感じてしまったのだ。

その後、あの女性と会うことはない。

俺が10年前に体験した話だ。

終わり

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