本当にあった海の怖い話4

前回→本当にあった海の怖い話3   (→1話から読む)

俺には聞きたいことが山ほどある。

でも、なんて聞けばよいのか、どれから聞けばよいのか迷っていた。

すばるさんは、手に持った水をちびちびと飲んでいる。

「えっと、溺れたのは、俺じゃないですよ。俺の友達です。」

俺は考えた末、カマをかけることにした。

この話に乗っかってきたら、この人は霊能者じゃないと思ったのだ。

「へーそうですか。じゃあ、私の勘違いです。」

流されてしまった。

このままだと会話が終わってしまいそうだ。

俺はたまらず、聞いてしまった。

「あのさっき、チビちゃんがどうとか言ってませんでした?」

「ああ、私の勘違いなのですから、気になさらず。」

すばるさんは、すべてを見透かしたように笑っている。

嫌味な笑いとか、冷笑ではない。

とても温かな笑顔に見えた。

そして、すべてを見透かしたような目でこちらを見ている。

こんな不思議な人には、後にも先も会ったことがない。

「あの、先ほど言ったことは嘘です。すみません。海でぼれかけたの俺です。」

「ああ、知っていますよ。あなたが、私を警戒してカマかけたことも。」

本当にこの人は何なのだろうか。

「教えてください。さっきのチビちゃんの話!」

俺は、チビちゃんのことがどうしても気になって仕方がなかったのだ。

この話は聞かなければ後悔するような気がしていた。

すばるさんは、軽く微笑みながらゆっくり頷いた。

そして、口を開いた。

「あなたが、小さいころ。 これは小学生くらいかな。白い猫ちゃん飼ってましたでしょう?猫にしては太ってる子で、名前は良く聞こえないな。最後の文字が「お」ですか?」

俺は頭を殴られたような気分だった。

確かに、俺が小学5年生まで「シロスケ」という猫がいた。

俺が産まれてすぐ家族に拾われたらしく、俺と兄弟のように成長した猫だ。

俺にとっては、人生の相棒的な存在だった。

でも、シロスケは俺が5年生になる直前に、病気で亡くなってしまった。

あのときは、1年以上立ち直れなかった。

学校にもしばらく通えなくなるほどだった。

そして、シロスケのことを俺だけは「シロオ」と呼んでいたのだ。

最後の文字が「お」の、太った白猫だった。

驚愕のあまり、俺はただ首を縦に振ることしかできなかった。

すばるさんは、そのまま続ける。

「そのチビちゃんがね。あなたが海でおぼれたときに、ものすごく怒ったんですよ。相手の手にガブガブ噛み付いてますから。」

「・・・シロオが俺を・・助けてくれたって言うんですか?」

「ええ。私が見えているものを言えば、天国って人の心の中にあるのですよ。だから、あなたがチビちゃんを忘れない限り、あなたの中にいますよ。」

自然と涙が溢れそうになる。

忘れたことなんてない。

一度だって忘れたことなんかない。

俺は心の中で返事をした。

でも、すばるさんはそれに返事をするように続けた。

「そうです、あなたが1度だって忘れていないから、チビちゃんは心の中に住んでます。あなたに敵意を剥き出しにした相手が海にいたので、チビちゃんが怒ってくれたのですよ。チビちゃんいなかったら、あなたそのとき死んでますよ。」

怖いことをさらっと言う人だ。

「あの・・、シロオは・・・・まだ俺の中にいるん・・ですか?」

だんだん、目頭が熱くなり言葉が出なくなってきた。

「ええ。もちろん。あなたが忘れない限りね。」

そういうと、すばるさんは会釈をしてどこかへ消えてしまった。

俺は、その場で下を向き泣き続けた。

ありがとう、ありがとう、シロオ。

もう、お前に心配かけないように、俺強くなるからな。

今度は俺がお前を守ってやるからな。

あと、数十年したら俺もそっち行くから。

そしたら、もうずっと一緒だ。

兄弟仲良く暮らそうな。

終わり

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