本当にあった海の怖い話3

前回→本当にあった海の怖い話2   (→1話から読む)

途中何度か振り返りたい衝動に駆られた。

でも、振り向いたら最後、また足首をつかまれそうな気がした。

だから振り向かずに走った。

おそらくたった数十メートルの距離だ。

その距離が、無限にも感じた。

やっとのことで砂浜に着き、大地の有難みを感じる。

友人たちのもとにたどり着いたときは「生」を実感できたような気がした。

友人の一人が半笑いで聞いてきた。

「どうした?泣きそうな顔してるぞ。」

俺は今起きたことを説明した。

だが、二人ともまったく信用していないようだった。

一人は笑って聞いている。

もう一人は、関心がなさそうにコンビニで買ったおにぎりにかじりついていた。

途中からは理解してもらうのは諦めた。

説明するだけ損だと思った。

俺は、その日はほとんどしゃべらなかった。

正確に言えば、しゃべれなかったのかもしれない。

頭の中が「あの手」のことばかりで、他の話題に移れないのだ。

・・・その後、俺があの手がと出会うことはなかった。

そして、この話には後日談がある。

その「手」の海水浴から約10年以上が経過した。

俺は会社員になっていた。

あるとき。

知り合いのイベントに呼ばれた。

そこで、顔見知りの男と偶然再会した。(その男を仮にAとする)

言葉通り顔見知り程度の関係で、たいして仲良くはないが挨拶をする。

Aとは挨拶以上の会話はなかった。

だが、Aの連れらしき男が話しかけてきた。

男の歳は、俺と同じくらいだろうか。

かなりのイケメンだ。

そして、独特のオーラのようなものを醸し出している人物だった。

その男は、「すばる」だと名乗った。

こういう場で、下の名前を名乗る人は珍しい。

さらに、すばるさんはおかしなことを言い出した。

「もう、水が怖いのは治りました?」

「はい?!」

この人は何を言っているのだろうか。

だが、思い当たるところがないわけではない。

俺はきっと不思議そうな顔ですばるさんを見ていたと思う。

すばるさんは俺の視線などお構いなしに続けた。

「海でおぼれるのって怖いですよね。チビちゃんには、しっかりお礼言わなきゃだめですよ。」

とても驚いた。

この人はなぜ俺が過去に溺れかけたことを知っているのだろうか。

俺は何も話していないのだ。

知り合ってから、1分も経っていない。

なのに、俺の過去を言い当てたのだ。

だが、チビちゃんというのは誰のことだろうか。

「あの、すばるさんでしたっけ?霊能者なんですか?」

俺はたまらず聞いた。

「いえいえ。世の中に“霊能力”というものがあるのか、私には分かりません。でも、私がちょっと特異体質なことは確かですね。」

彼は言い終わると笑顔になった。

「あの、どういうことか説明してもらえません?海でおぼれたとか、俺の過去を知っているような感じですけど・・・・」

俺は、あの日海で起きたことを誰にも話していない。

あの日友人たちに説明してもまったく相手にされなかったことから、その後は話していないのだ。

だから、このすばるさんという男が、仮に俺の過去を調べたとしても、そのエピソードが出てくるはずはないのだ。

何者なのだろうか。

このあとすばるさんの口から出た言葉を、俺は一生忘れないだろう。

あの日、俺が海で体験したことの裏には、衝撃の事実が隠されていたのだ。

続き→本当にあった海の怖い話4

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