前回→本当にあった怖い話「障子越しの人影」2 (→1話から読む)
母にも姉にも伝えることが出来ない。
言葉が足りないせいなのか、はたまた俺の言っていることが現実離れしすぎているのか。
二人とも、俺を納得させようとするばかりで、まったく取り合ってくれなかった。
きちんと伝えて、何かしらの対処をしなければいけないような気がしていた。
このままだと「カタカタカタカタ」する人影が、また出てくるような気がしたのだ。
でも、俺にできるのは、泣くことと、つたない説明だけ。
なかなか泣き止まない俺に、母は言った。
「じゃあ、隣の人に聞いてくるよ。そうすれば、あんたも安心するでしょ?」
その提案は、ありがたかった。
母は隣に出かけて行った。
だが、なかなか戻ってこない。
俺は不安で、玄関の前で待っていたがドアは一向に開かない。
徐々に、さっきとは違う恐怖が押し寄せてきた。
あのカタカタの人影のせいで、母が戻ってこなかったらどうしよう。
そう考えると、不安で仕方がなかった。
どれくらい経ったであろうか。
玄関のドアが開いて、母が戻ってきた。
母が無事に戻ってきてくれたことに安堵する。
だが、浮かない顔をしているように見えた。
俺は母に駆け寄り、事情を聞こうとした。
「お母さん・・・どうだった・・・・?」
母は、少し沈黙した後でこう言った。
「あのね・・・・隣の人に事情を説明して、聞いてみたんだけど。 隣の人が、言うのよ。【ここ数時間、二階には誰も行ってませんよ。】って・・・・」
俺はその瞬間、背筋が氷のように冷たくなり、泣き出した。
じゃあ。
あの人影は、なんだったのだろうか・・・・
終わり