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動きが激しくなってきたと思ったら、突然その人影は消えた。
隣の家の電気が消されてしまったのだ。
俺は、そのとき始めて恐怖を覚えた。
突然とんでもない恐怖の波が押し寄せてきたのだ。
俺は、泣きだした。
泣きながら、一階にいる家族へ助けを求めた。
そして、階段を猛烈な勢いで駆け降りた。
俺のただならぬ泣き声に、母や姉が驚いた顔で階段の下まで来ていた。
「どうしたのっ?何があったのっ!?」
母が焦ったように聞いてきた。
幼稚園児の俺には、今見たことを上手く説明できない。
しばらくの間、ひたすら泣きじゃくるしかなかった。
母に抱きついて散々泣いた後、今見たものをできる限り言葉にした。
泣いて、少しは冷静になれたのだと思う。
幼稚園児のボキャブラリーだから、どこまで伝えられたかは分からない。
案の定あまり伝わらなかったようで、母も姉も口を揃えて言った。
「大丈夫だよ。隣の人が二階の電気点けて、部屋の中で少し動いただけでしょ?なにも怖いことなんかないよ。」
でも、俺は納得できない。
幼稚園児が人生経験を語るなんて笑えるが、あんな変な動きの人間を今まで見たことがないのだ。(大人になった今でも見たことがない)
今さっき見た人影が、とにかく異常だったことを必死で伝えようとした。
つたない言葉で説明する。
だが、まったく分かってもらえずに、今度は悔しさで涙が出てきた。
あれは、絶対普通じゃないんだ。
何で分かってくれないんだ。