怖い話実話 長編「夢でよかった」10

前回→怖い話実話「夢でよかった」9   (→1話から読む)

振り下ろしたスパナが空を切った。

押入れの中には誰もいなかった。

つまり、この部屋には誰もいなかったということになる。

友達は、安堵とも残念ともとれるような顔をしていた。

「お前が鍵をかけ忘れただけじゃないのか?」

そう言われると、そんな気がしてくる。

部屋を出るときの俺は、冷静でなかった。

よく覚えていない。

「ああ、もしかしたら、かけ忘れたかも。お騒がせしたな。」

二人して少し顔がほころぶ。

もしかして、今日笑ったのはこれが初めてかもしれない。

だが、ホッとしてもいられない。

例のビデオを、友達に見てもらわなければ。

俺は、ビデオデッキに入れっぱなしだったテープを再生させようと、テレビをつけた。

そして、ビデオの再生ボタンを押した。

すると、テレビ画面に文字が表示された。

《テープが入っておりません》

そんなはずはない。

もう一度再生ボタン。

《テープが入っておりません》

俺は、ビデオデッキに指をつっこみ、中を覗いた。

デッキの中は空だった。

そして、あることに気が付いてしまった。

「ああーーー!」

俺が突然大声をあげるものだから、友達は怒ったような声を出した。

「なんだよっ? どうした?何かあったのか?」

驚かせてしまったのだろう。

俺は返事をする。

「テープがないんだよ。」

「どこか違うところに置いたんじゃないのか?」

「違うんだ。俺、部屋出るとき慌てていたけど、一つだけ覚えてることがあるんだ・・・・ 俺、部屋を出るときにテレビもビデオも消してないんだ。でも、俺たちが戻ってきたときには、テレビもビデオも消えていただろ。そんで、ビデオテープもなくなっているんだ・・・・」

続き→怖い話実話「夢でよかった」11

スポンサーリンク