怖い話実話 長編「夢でよかった」9

前回→怖い話実話「夢でよかった」8   (→1話から読む)

気のせいだろうか。

普段見慣れているはずのアパートが、今日はまったく別の建物に見える。

今日のアパートは、いつもよりどんよりしているのだ。

二人で外の階段を上った。

部屋の鍵を開けようとして、手が止まる。

「どうした?」

すぐに友達が聞いてきた。

「鍵が開いてる。」

二人の間に緊張が走る。

友達は、無言でバッグの中からスパナを取り出した。

俺は部屋の外に放置したままのビニール傘を手に持った。

こんな物でもないよりはましだ。

手にジンわりと嫌な汗をかいている。

出来れば入りたくない。

でも、入らなければならないのだ。

こっちは男二人だ。

いざとなれば、正当防衛でぶっ飛ばしてやればいい。

片手で傘を持ち、片手でドアノブを回した。

きぃぃぃーーーー

ドアがきしむ音に驚き、悲鳴を上げそうになった。

俺は弱虫だ。

カーテンを閉めたままの部屋は薄暗い。

ワンルームの部屋にも、入り口からは見えない死角がたくさんある。

今にも、誰かが死角から飛び出してくるのではないかと想像してしまう。

慎重に室内に入る。

一つ一つ、二人で見て回った。

キッチン、風呂トイレ、ラックの裏。

誰もいなかった。

残るは押入れのみ。

友達が小声で俺に言った。

「お前が横から押入れ開けろ。俺が正面からスパナ振り下ろす。いっせいのっせ、で、行くぞ!」

俺は無言で、顔を縦に振った。

声を出さずに目配せで「いっせいのっせ」。

直後、一気に押入れを開けた。

その瞬間、友達は勢い良くスパナを振り下ろした。

続き→怖い話実話「夢でよかった」10

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