怖い話実話 長編「夢でよかった」7

前回→怖い話実話「夢でよかった」6   (→1話から読む)

目的の駅に到着した。

俺は、しつこいくらい周囲の様子をうかがった。

とりあえず、こちらを見ている人間はいないようだ。

だが、安心できない。

常に誰かに見られているような、誰かに追われているよう気がしてならないのだ。

今にも、「ねえ?・・・・夢でよかった?・・・」と声をかけられるのではないかという妄想が浮かんでくる。

道を歩くだけで、こんなに神経をすり減らすなんて。

やっとのことで友達の住むアパートにたどり着いた。

ピンポーン

インターホンを鳴らすが反応ない。

ピンポーン ピンポーン

友達が不在かもしれない、というだけのことで泣きそうになった。

きっと精神が不安定なのだ。

ガチャガチャ

ドアノブを回してみた。

駄目だ、やはり鍵がかかっている。

ピンポーン ピンポーン ピンポーン

「ちくしょう、何でいないんだよ。」

声に出しながら、ドアを叩いた。

ドンっ ドンっ ドンっ

すると、突然、ドアが開いた。

そこには友人が立っていた。

怒りと恐怖を足して二で割ったような顔をしていた。

「なんだよ、お前かよ?いったい何?何度も何度もビックリするだろ?」

怒っている声だ。

「悪いな、ベルしたんだけどね。(ポケベルに文字を入れることを当時ベルすると呼んでいた)」

「ああ、寝てたから見てねえよ。つーか、俺は休みの日は、午前中は起きないことにしてるんだ。」

「入っていいか?」

友達の言うことを無視して、俺は聞いた。

とにかく今は外にいたくない。

いつ後ろから、得体の知れない奴が現れるか分からない不安があったのだ。

「ああ。入れ。」

まだ、声は怒っているようだ。

それとも寝起きだからだろうか。

友達はぶすっとしている。

でも、今の俺はそんなことを気にしてなんていられない。

部屋に上がって思ったことがある。

友達の部屋がとてつもなく安心できるのだ。

根拠はないが、ここは安全地帯だと思うことができた。

ここにきて、喉の渇きに気が付いた。

人は本気で恐怖を感じると、口の中の水分が飛んでしまうのかもしれない。

おそらくそんなことを知らないであろう友達は、だまって冷蔵庫からコーラを出してくれた。

俺は、出してもらったコーラを一気に飲み干した。

途中何度も炭酸でむせたが、今の俺には何よりのご馳走だった。

コーラがこんなに美味しいとは知らなかった。

飲み終えた俺に向かって、いつに無く真剣な顔をした友達が聞いた。

「いったい何があった?ただ事じゃないんだろ?」

続き→怖い話実話「夢でよかった」8

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