前回→怖い話実話「夢でよかった」2 (→1話から読む)
撮影しているカメラが大きく揺れて、一瞬地面が映った。
そのとき、俺は吐き気を覚えた。
画面に酔ったわけではない。
地面と一緒に、あるものが見えてしまったのだ。
撮影者の靴だ。
撮影者の靴に驚いた理由、それは俺の靴と同じだったからだ。
同じメーカーの靴って意味ではない。
俺の靴だったのだ。
なぜそれが自分のものだとわかったのかとい言えば、その靴が少し特殊だからだ。
当時は、ナイキのスニーカーが流行っている時代だった。
学生身分の俺は、一足何万もするスニーカーには手が出せない。
でも、ナイキを履きたい気持ちはある。
だから、ナイキの偽物を安く買って友達と一緒にオリジナルの色に塗っていたのだ。
だから、そのスニーカーは世界でたった一つしかないものなのだ。
一瞬のことでも、見間違えではないと思う。
あれは、俺の靴だ。
確認しに玄関まで行きたいが、行きたくない。
できれば夢であってほしかった。
体がガタガタと震えているのが分かる。
何とか勇気を出して、玄関に向かおう。
確認しなければ、ならないのだ。
玄関に行き、靴を確認した。
そこに俺の靴はちゃんとあった。
盗まれたわけではないようだ。
ではなぜあの撮影者も、同じものを履いているのだろうか。
一時停止したビデオの画面がチカチカしている。
この先を見たくない。
何か恐ろしいものが映っていそうな気がしていた。