あれは、俺が大学生の頃だった。
当時、ボロアパートの2階に住んでいた。
実家からの仕送りももらっていたが、それだけでは生活できずバイトもしていた。
ある日のこと。
バイトから帰ると、ジャケットも脱がぬままベッドにダイブした。
あまりに疲れていたため、風呂に入るという発想すらなかった。
そして、いつの間にか眠っていた。
どれくらい経っただろう。
ガタンという音で目が覚めた。
時計を見ると2時半を指している。
バイトから帰ったのが確か12時過ぎだったはずだ。
2時間ほど眠ってしまっていたようだ。
それにしても、さっきのは何の音だろう。
玄関の方から聞こえた気がするが。
とりあえず、トイレに行こう。
ついでに玄関をチェックしてみた。
ドアの郵便受けに何かが入っているのが見えた。
どうやら、さっきのは郵便受けに誰かが何かを入れた音だったようだ。
深夜に、誰が何を配達してきたのだろうか。
一応、調べておこう。
ないとは思うが、発火装置でも入っていたら大変なことになる。
郵便受けを開けると、そこには1本のビデオテープが入っていた。(当時はまだDVDなんてなく、ビデオしかない時代だ。)
何のビデオだろうか。
真っ先に思いつくのは、AVである。
誰かのイタズラだろうか。
とりあえず、放火ではなくて安心した。
ビデオの中身が多少気になったが、それ以上に今は眠い。
トイレから戻ると、まだ脱いでいなかったジャケットを脱ぎ捨てた。
そのままベッドに横になると、あったという間に眠ってしまった。
まぶしさで目が覚めた。
カーテンの隙間から、日の光が差し込んでくる。
安物のカーテンでは、太陽の光を防いでくれない。
時計を見ると朝の9時だった。
口の中が気持ち悪いことに不快感を覚える。
昨日、歯磨きをしないで眠ってしまったのだ。
ノドも乾いていた。
冷蔵庫を開けると、麦茶を飲んだ。
そして、歯を磨くことにした。
歯ブラシをもってベッドの上に座る。
すると、目が1本のビデオテープにとまった。
昨日の夜に投げ込まれた謎のビデオテープだった。
見るべきだろうか。
なんとなく、嫌な予感がした。
だが、同時に好奇心もあった。
俺はテープをビデオデッキに入れると、再生ボタンを押してみた。